山梨学院(山梨)が21世紀枠の氷見(富山)に4-1で逆転勝ちし、16強進出を決めた。初回に1点を先制されたが、2回に進藤天内野手(3年)が同点の適時内野安打。主将の一打で勢いづいたチームは一気に逆転に成功。春夏を通じて初の甲子園2勝目を挙げ、同校の歴史を塗り替えた。

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最後の打者の見逃し三振で勝利が決まると、進藤はエース林と笑顔でハイタッチした。同点打を含む3安打1打点の活躍。すがすがしい表情で今春2度目の校歌を歌った。「自分たちが勝てているのは応援のおかげ」と、父貴司さん(52)も駆けつけていたアルプス席の応援団に感謝した。

野球が大好きな少年だった。中学時代は学校から帰宅後、すぐに父を誘って近所の公園に向かった。1時間ノックを受けるとバッティングセンターに移動し、1時間の打ち込み。帰宅後も素振りをするなど、野球漬けの日々を過ごした。家でも野球のユーチューブを見て、テレビは常に野球中継。寝る時にはバットとグラブを隣に置いた。貴司さんは「朝起きてから夜寝るまで、ずっと野球のことを考えていた」と息子の姿を懐かしそうに振り返った。

それほどの“野球小僧”でも、過去2回の甲子園は苦い思い出だ。1年春からベンチ入りし、昨春、昨夏の甲子園もスタメン出場。思うような力が出せず、春夏合わせて8打数無安打に終わった。その日から「甲子園」の三文字が自分を強くしてくれた。吉田監督の名物トレーニング、10キロの丸太を持って2時間走り続ける苦行にも耐えられた。

悔しさの分、今大会にかける思いは人一倍強い。「過去2回は打ちたい気持ちが強すぎて空回りしてしまったので、いつも通りを意識して試合に入った」。初戦の東北(宮城)戦では先制打を放つなど2試合で計6打数4安打2打点。大会前の「今回の春で巻き返します。1安打だけじゃ終われない」との言葉を実現させ、チームの歴史も塗り替えた。だが達成感はない。「2勝で満足せず、チャレンジャーな気持ちを前に出して一戦必勝で頑張りたい」。さらなる活躍で、新たな歴史を刻む。【星夏穂】