米子松蔭がたどり着いた聖地は甘くなかった。9回、意地の2点目を挙げ、なお1死一塁で打席に久白(くしろ)。3安打1四球の2番打者に期待は膨らんだが、遊ゴロ併殺で試合終了。「みんながつないでくれたのに、結果を出せなかった」と自分を責めた。

「よっしゃ! 打った!」。安打が出るたび、アルプス席で兄優人さん(21)は高校の同期と喜び合った。「弟が出てくれて、うれしい。自分もここでやりたかったです」。21年7月。鳥取大会初戦の前日に、部外の関係者が新型コロナウイルスに感染。初戦の直前に辞退した。球場行きのバスの中で、塩塚尚人監督(33)のすすり泣きが聞こえてきた。ナインはすべてを察した。

その後、主将のSNS投稿を契機に不戦敗が取り消された。甲子園には届かなかったが、一連の経緯が全国的な話題になった。当時の二塁レギュラーが優人さん。中2だった久白も、あの夏は忘れられない。「野球をやれるのは当たり前じゃない。多くの人のサポートがある。こうしてセンバツに出してもらって、感謝しかありません」。

父、いとこ、兄に続き同校野球部に進み、初めて甲子園の土を踏んだ。17年夏以来の甲子園。「兄にプレーを見せられてうれしいです。小さいころから父と3人でずっと練習してきた。兄の姿を見て僕は成長できた」。現チームは一貫して、目標を日本一に定めている。特別な「春」を無駄にしない。【柏原誠】

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