大谷の剛速球にも、巨人高橋由伸外野手(39)の美しい打撃フォームは乱れなかった。1回2死二、三塁。日本ハム大谷の初球118キロカーブを見極めた直後、152キロが外角高めにズバッと来た。球速差は34キロ。だが、完璧にバットの芯で捉えて、打球は左翼手西川の頭上を超えた。3回の第2打席も直球に力負けせず、右方向への二塁打。お役御免とベンチに退き、「いい形で打てました。(2打席目は)良い方向に打球が飛んでくれました」と控えめながら、大谷に貫禄を見せつけた。

 プロ18年目の経験が、コーチ兼任となっても生きている。2月の春季キャンプは「やってみないとわからない」と手探りで迎えた。だが、選手としての仕上げ方は熟知している。指導と調整のバランスを取りつつ、160キロの打撃マシン(通称・球道くん)も打ち込み、バットの感覚を研ぎ澄ましていった。そんな姿に、原監督は「近年で一番いい状態。兼任コーチがプラスに働いている」と納得の表情を見せれば、高橋由も「どうなるか分からない中で、一応、必要なことはできたかな」と手応えを得て3月を迎えた。年齢がほぼ半分の大谷の速球を打ち返した2本は、二足のわらじを履きこなした証明だった。原監督が「見事ですね」と言えば、川相ヘッドコーチも「手本にしても簡単には打てないと思う」と賛辞を惜しまなかった。

 高橋由に続けとばかりに、大幅に入れ替わった巨人打線も大谷に襲いかかった。荒れ球を冷静に見極め、甘く入れば打ち返し、いやらしく攻め、崩した。大谷からの4安打は全て直球と、各打者が求められていた仕事に徹した。原監督は「継続していってほしい」と、さらなるアピール合戦を欲した。【浜本卓也】