巨人の新打線が機能し、今季初の3点差逆転勝ちで2連勝を決めた。6回1死満塁で、5番に入った長野久義外野手(30)の3点適時三塁打で同点。4番から6番に下がった阿部慎之助内野手(36)が、決勝犠飛を放った。第84代4番に指名された亀井善行外野手(32)は2安打でつなぎに徹するなど、各打者が持ち場をまっとうした。阪神が敗れて勝率5割で並ぶも、勝利数が多い巨人が6月23日以来となる首位に立った。

 敗戦を覚悟していた巨人ファンの雰囲気が、がらりと変わった。3点を追う6回1死満塁。長野がヤクルト小川の初球の外角直球を右中間に運ぶと、3人の走者が一気に生還した。完敗ムードからの同点に場内が沸く中、阿部が決勝犠飛で一挙4得点。長野は「みんながいい形でつないでくれた。いい得点の仕方はなかなかなかったので良かった」と興奮気味に言った。

 めまぐるしく順位が変わるチームと同様、長野ももがいていた。打撃の調子が思うように上がらず、5日中日戦はコンディション不良で欠場した。体は万全でないにもかかわらず、この日は4月11日以来の5番で先発起用された。「打順は関係ないですよ」と言いつつ、期待は分かっていた。

 プレーで思いを体現するのがスタイルだ。1日の広島戦では、判断ミスで二塁から本塁に生還できず敗戦を喫した。翌2日に「取り返したかった」と初回に全速力で三塁打。この日も下半身に不安を抱えつつ「気がついたら走っていました」と三塁を陥れた。休んだ分も取り返したい気持ちが思い切りの良さを取り戻させ、阿部の犠飛を生んだ。

 浮上のきっかけをつかもうと、原監督も中軸の組み替えに踏み切った。5番長野のほか、阿部を4番から6番に下げ、5日中日戦で2本塁打の亀井を第84代4番に据えた。亀井は「よく分からないです…」と重責を感じつつも「自分の打撃をするだけ」と肝に銘じた。6回1死一、二塁と1発同点の場面でも、強引にいかずに右前打。長野の一打を演出したつなぎの新4番に、第48代4番の原監督は「役割を与えるに値する選手。いいスタートを切った」と合格点を付けた。

 1カ月ぶりの2連勝で勝率5割に戻した。原監督は「じっとこらえて取る勝利が多かったけど、久しぶりにもぎ取って勝ち得た勝利ですね」と声を弾ませた。阪神が敗れて首位に浮上。大混戦を変幻自在の新打線で抜け出す。【浜本卓也】