記録は大きかった。小さな大魔神ことDeNA山崎康晃投手(22)が、新人最多32セーブをマークした。9回2死、打者中村を0-2と追い込むと、自然発生的に「ヤ・ス・ア・キ」コールが響き渡った。3球目で遊ゴロに抑えると場内の興奮は最高潮に達した。ヒーローは「数字にこだわりはないけど、みなさんの応援のおかげで記録を更新できました」と感謝。今季32回目の満員御礼の中で記録を打ち立てた。「なかなか面と向かって、素直に感謝の言葉は言えないんですけど、ありがとうございます」。スタンドにいる母にもお礼の言葉を贈った。

 視野が広く、機転が利く。セーブを挙げた試合後、敵側三塁席前まで行って声援に応えたことがある。意外に珍しい光景だ。「ゴールデンウイークで人が多かったので、向こうにも行った方がいいと思ったんです」と話した。新人は先輩や周りの人の行動に右へ倣えが普通だ。しかし自分で判断して、いいと思えば違う行動を取ることもできる。この姿勢は落ち着いたマウンドさばきに通じる精神的な強さだろう。

 しかし、中畑監督は立ち上がりを見て、本来の姿と違うと感じていた。「だいぶ疲れている。ところが次のバッター、次のバッターと調子を上げる。ここまで安定した投球をプロ野球の世界ではできない。しかも新人で。別格だね」と最大級の賛辞を贈った。

 会見場にいる山崎康の姿を窓越しに見つけたファンが、球場の外から康晃コールで祝福した。試合後からは新記録のタオルも発売された。お祝いムードの中で「アイツが出てたら勝てない。そう思わせる投手になりたい」と言い切った。山崎康が目指すのは新人記録ではない。【矢後洋一】

 ▼山崎康が今季32セーブ目を挙げ、90年与田(中日)を抜く新人最多セーブの新記録をマークした。シーズン最多セーブのプロ野球記録は05年岩瀬(中日)07年藤川(阪神)の46セーブで、40セーブ以上は6人、11度記録されているが、過去6人の中で最年少は07年藤川の27歳。山崎康は今年の10月で23歳。新人記録の次は、最年少40セーブが目標となる。