ソフトバンクが開幕3戦目で今季初白星を挙げた。先発の武田翔太投手(22)が9回を128球で無失点に抑え、0-0のまま延長へ。10回に打線が爆発し7点を奪い、武田も今季1勝目と報われた。チームは開幕から3戦白星なしなら低迷期の90年以来となる危機だった。楽天との敵地開幕3連戦は1勝1敗1分け。明日29日から地元ヤフオクドームに戻り、西武と2連戦を行う。

 今季初登板の武田が、鋭い「洞察力」でチームを勝利に導いた。0-0の9回裏。2死満塁の場面だ。サヨナラのピンチでも、武田は冷静に打者嶋の姿を見ていた。しぐさを見て、直感した。「引っ張るだろうな。初球を狙ってくる。直球はいけない。スライダーで1球で引っかけてくれたらいいな」と。初球、外角ボールゾーンに逃げるスライダーで三塁ゴロ。打者心理を読み切り、1球で料理。10回の打線の7点爆発へつなげた。昨年から相手の映像を繰り返し研究した。「昨年より(相手を察知する)幅は広がっている」と、広い視野でマウンドに立てている。

 調子はよくなかった。150キロを超えるはずの直球のこの日の最速は142キロ。ボール1・5個分ほどスライドするなど荒れ球だった。「動いてくれるから、真ん中低めに腕振って投げたら何とかなるだろうと思った。(力の)抜け具合はよかった」。自主トレからこだわってきた直球と脱力。さらにフォームも安定したこともあって、毎回のように走者を背負っても大崩れしなかった。「(長袖は)投げにくかったので」と4回からアンダーシャツを半袖に。寒い仙台でも投げやすさを優先した。

 工藤監督も「(ピンチの)9回も代えるつもりはなかった。彼で勝敗が決するならしょうがない。あれだけの投球をしてくれたら十分」と評価した。昨年の4月8日、同じ楽天戦、コボスタ宮城で9回を無失点に抑えたが、打線の援護なく降板。10回に救援陣が打たれ負けた悔しい経験がある。この日は9回のピンチで2度も内野陣が集まり、内川や松田から声をかけられた。「マウンドで助けてもらうような言葉をかけてもらい、自信を持って投げられた。みんなで取りにいった1勝と思います」。自由な性格で普段は孤独を好む男が、この日はナインの後押しを感じた。野球頭脳も心も成長した22歳右腕。昨年13勝は勝ち頭だったが、今季はさらに上積みされそうな気配だ。【石橋隆雄】