日本ハム大谷翔平投手(21)が苦しみながらも、今季初勝利を挙げた。好調ロッテ相手に2回までに5点の援護を受けたが、直後の2回に4失点して一時1点差に。3回以降は配球パターンを変更し、最速158キロ直球とスライダー主体で切り抜けた。今季ワースト4失点ながら138球で今季初めて9回完投。4安打4四球、初の2ケタ10奪三振でしのいだ。チームの連敗を止め、エースの面目を保った。

 もがき苦しみ、壁を越えた。最終9回2死。大谷は、この日最速タイ158キロで、鈴木を見逃し三振に切った。138球、今季初の9回完投。6試合目のマウンドで、1勝目を手に入れた。「(未勝利の)5試合ですけれど、僕的には長く感じました。難しいなと」。昨季15勝の最多勝右腕が、余韻に浸った。今季ワースト4失点。内容不十分でも、チームの連敗も止めた。エースとして最低限の仕事だけは遂げた。

 根気と機転が、命綱だった。大量5点の援護を受けた後の2回。4安打に1四球も絡み、一挙4点を失った。直球がスライダー回転。必然的に宝刀のフォークも抜けた。「ワンサイド(ゲーム)でいかないといけないところ」と大勝への流れを、自ら手放した。1点リードを保ち、3回以降は配球を変更。この日の特性を生かし、スライダーを主体にした。前例が少ない投球パターンも奏功し、ロッテ打線を3回以降は無安打、無失点でしのいだ。

 打ちひしがれた敗戦から、はい上がった。前回登板の4月24日ソフトバンク戦。5回までに4点のリードをもらった。7回途中、右手の人さし指と中指にできたマメの違和感で降板。自ら試合の流れを変え、勢いづいた相手打線の前にサヨナラ負けした。今季の低迷を象徴する「シグナル」に泣かされた。開幕から停滞した1つのカギがマメだった。

 進化を目指すゆえの宿命だった。レンジャーズ・ダルビッシュの助言も受け、このオフ、肉体改造に着手。体重は90キロ台前半から一時、約100キロまで増量した。出力アップした肉体の操縦に、苦慮。投球メカニズムも、開幕7連勝した昨季と微妙に変わった。その変化がマメに表れているという。2回の乱調が示すように、まだ16年のボディーとの闘いは終わっていない。

 進化の序章ともいえる壁を越えた。栗山監督も厳しく戒めながら、願った。「情けない投球だったけれど1つ勝って、落ち着いてくれる」。この日は直球のスライダー回転、マメ…。理想のリリース動作に至っていない証しは、ポジティブに考えれば伸びしろでもある。向き合い、克服した先に、大谷が志す、理想の投手像がある。【高山通史】

 ▼大谷が138球を投げて今季初勝利。13、14年は登板2試合目、15年は1試合目で白星を挙げており、最も遅い1勝目となったが、今回も連敗は2止まり。大谷はまだプロで3連敗がない。打撃では今季3本塁打で、これで4年続けて勝利と本塁打を記録した。プロ入り4年連続で「勝利+本塁打」は69~72年金田留(東映)以来、44年ぶり。高卒1年目からは50~60年金田(国鉄)65~69年池永(西鉄)66~74年堀内(巨人)に次いで4人目だ。なお、138球は14年8月17日西武戦149球、15年9月15日西武戦139球に次いで3番目に多かった。

 ▼大谷が今季先発した6試合の失点は14で、1~3回の序盤に9失点(1回3失点、2回6失点)と集中している。中盤4~6回は3失点(4、5、6回1失点ずつ)7回以降の終盤は2失点(7回2失点)。