強気のひと振りで試合の流れを一新した。巨人村田修一内野手(35)が1点を追う5回1死、カウント3ボールから8号同点ソロを放った。打線を目覚めさせ、6回の阿部の決勝打を呼び込んだ。村田は2日のヤクルト戦で左手甲に死球。腫れと痛みが残る中、自らを鼓舞して仕事を果たした。チームは2連勝で5カードぶりのカード勝ち越しに成功。6月8日以来縮められなかった首位広島とのゲーム差を、ついに1減らした。
バットを握る両手に力を込めた。0-1の5回1死。カウントは3ボール。いつもなら1球様子を見る場面だが、この打席の村田は違った。「展開的に(坂本)勇人以外ヒットが出ていない。思い切って狙いにいった」。直球系でストライクを取りに来るとの読み通り、真ん中に来た直球を思い切りかち上げた。左中間席への同点アーチ。それまで岩崎に1安打と完璧に抑えられ沈んでいた球場のボルテージを一気に上げた。
体は万全ではない。2日のヤクルト戦で左手甲に死球。血管が切れ、「ドラえもんの手みたい」(村田)に大きく腫れ上がった。周囲からは骨折も心配された。「大丈夫」と明るく返し続けたが激痛が消えなかった。「痛いッスよ。でもプレーできますもん。折れていたらできないでしょ」。
プロ通算142の死球で骨折は1度だけ。今回も骨折して離脱せずに済んだのは体が丈夫なことが大きいが、村田は「体じゃなくて、ハートが強いんですよ」とニヤッと笑って否定した。「絶対に試合に出て勝ちに貢献する」。就寝時には「手が下になって血が(患部に)たまらないように」と左手を上げたまま目をつむった。勝利への執念が値千金の同点弾の源だった。
村田の1発で劣勢ムードが一転した。6回にクリーンアップの3連打などで2点を勝ち越し。試合をひっくり返しての2連勝でカード勝ち越しも決めた。6回1死満塁から決勝打を放った阿部は「あの1発が試合の流れを引き戻した。すごいと思います」と脱帽すれば、高橋監督も「打ちあぐねている中で3ボールから思い切っていって、いい打撃だった」とたたえた。
首位広島の背中はまだ遠い。それでも村田は「1日に1勝しかできない。その日その日をしっかり戦うことが、すべきこと」と力を込めた。セ・リーグのペナントの灯は消さない。村田の左手甲も心も、折れてはいない。【浜本卓也】



