首位広島が50勝に20年ぶりでリーグ一番乗りした。2回に1点を先制されたが、3回2死一、三塁で新井貴浩内野手(39)が逆転の8号3ラン。7回には丸佳浩外野手(27)、「アーチ不敗神話」の鈴木誠也外野手(21)にもダメ押し弾が飛び出した。阪神に連勝し、貯金を今季最多の18とした。

 大きな体がクルリと回った。1点を追う3回2死一、三塁から、阪神能見の膝元へ落ちる変化球に新井が反応した。ためをつくった下半身の力を使って素早く体を回転させ、最後は左手1本で振り抜いた。そのままバットを置くと、その場で打球の行方を確認した。「うまく下半身で粘って打てた」。自賛の打球は左翼席へ一直線。甲子園の虎党を静まり返らせた。

 能見には昨季から試合前まで31打数11安打、打率3割5分4厘と好相性だった。1打席目も四球を選び、2打席目だった。この日のファーストスイングが逆転の8号3ラン。「チャンスだったので何とか走者をかえそうと思った。最高の結果になって良かった」。ひと振りで形勢をひっくり返した。

 今月は出場5試合で、10安打中6本が長打。3本塁打と量産し、昨季を上回る8本塁打とした。それでも「本塁打を打ちたいと思ってシーズンに入った。まだまだ」と意欲を示した。7回の左前打で通算2058安打とし、松井稼(楽天)を抜いて日本球界現役最多となった。

 打撃だけでなく、献身的な進塁打や次の塁を狙う走塁は若手の手本。菊池は「僕たちは新井さんの背中を見ていますよ」と尊敬の念を強める。北陸遠征の休養日には、小窪選手会長を始め野手陣と今村ら若手投手陣を食事に誘った。親睦を高め、士気を高めた。

 新井の姿を見て、後輩たちも負けじと活躍する。3番丸は5月29日以来の4安打固め打ち。5回は田中の死球と菊池の犠打でつくった1死二塁の好機に「食らいついていった」という適時打、7回には榎田から11号ソロを放った。緒方監督は「新井が素晴らしい打撃で、今日も行けると勇気を与える一打を放ってくれた」と称賛。39歳のベテランがチームを引っ張り、96年以来のリーグ最速50勝で貯金を今季最多18とした。好調の裏には、大きな新井効果がある。【前原淳】

 ▼広島が阪神戦6連勝で50勝に到達。広島のセ・リーグ50勝一番乗りは75、79、80、96年に次いで20年ぶり5度目。84試合目で50勝は80年78試合、95年82試合に次いで球団史上3位のスピード到達。今季の広島は20勝目からすべて区切りの勝利を一番乗りしているが、それぞれの到達試合数は20勝36試合目、30勝55試合目、40勝71試合目、50勝84試合目。徐々にペースアップし、40勝から50勝はわずか13試合で記録した。

 <広島お久しぶりメモ>

 ◆4月26日 3者連続本塁打 05年9月2日巨人戦以来、11年ぶり9度目の球団タイ記録。

 ◆5月1日 3試合連続9点以上 81年6月20日~23日に4試合連続で記録して以来、35年ぶり。

 ◆5月24日 ジョンソン2試合連続完封 99年紀藤以来17年ぶりで、広島の外国人投手では初めて。

 ◆6月18日 鈴木連続サヨナラ弾 プロ野球10人目で、広島では84年長嶋以来、32年ぶり2人目。

 ◆6月19日 鈴木3戦連続V弾でリーグ40勝一番乗り 3戦連続V弾は96年江藤以来で、セ40勝一番乗りも96年以来、20年ぶり。

 ◆6月26日 6月5度目のサヨナラ勝ちでマツダ10連勝 月間5度のサヨナラ勝ちは球団初で、本拠地10連勝は81年以来35年ぶり。

 ◆6月29日 11連勝 84年に球団記録の12連勝して以来、32年ぶり2度目。

 ◆7月2日 首位ターン決定 96年以来6度目。

 ◆7月3日 2位に10差 2位に10差以上は79、80年以来36年ぶり3度目。