パッと消える魔球は、名付けて柳ユーレイカーブ? 中日ドラフト1位の柳裕也投手(22=明大)が19日、2度目のブルペンで得意のカーブを解禁した。34球のうち3球だけだったがいずれも大きく変化。ブルペン捕手が面食らい、捕球ミスするほどだった。明大の先輩の楽天星野仙一副会長がカーブの過信を警告しているが、この曲がりを見たらやはり期待感は高まる。

 「お~!」。吉田ブルペン捕手の驚く声が室内に響いた。中腰で構えたミットを素早く下げたが追いつかない。バウンドしていないのに球は後ろにコロコロ。柳は笑顔でペコリとおじぎした。直球を数球はさんでからの2球目、3球目は何とか捕球した。ウワサのカーブの威力を雄弁に表現する一幕だった。

 自ら「独特の球」と言う通り、縦に鋭く落ちる軌道は周囲の視線を奪った。吉田ブルペン捕手は映像を見て曲がりを想定していたが、想像を上回ったようだ。「高いリリースから真下に落ちてくる。あんなにきれいに落ちてくるとは。チームにはいない(球筋)」。ユーレイのように“消える魔球”に目を丸くした。

 注目のカーブ解禁にも柳は「曲がってはいたけど、1度上に浮き上がる感じがなかった。今日くらいだと全然ダメ」とサラリ。抜くのではなく最後までしっかり握って、腕を強く振り、手首を返してリリースする。体が仕上がれば、まだ威力は増すに違いない。

 直球の平均が140キロ台前半。代わりに最も注目されたのが、このカーブだった。制球もよく、アマではあらゆる状況で効果を発揮した。だが、ここにきて大先輩の星野氏から「カウント球にしておけ」と再三警告されていた。

 柳は、貴重な助言と受け止めつつも、打者の反応を見ながら考えていく構えだ。「困ったらカーブ」では決してなく、打ち取る段階で必要なパーツの1つととらえる。「打者の目線を1度外せたらいいくらいに考えている。直球もだけど、プロではどんな反応になるのか気にしてみたい」。キャンプ、オープン戦と続く腕試しの場。東京6大学リーグで歴代8位の338奪三振を誇るドクターKの本領発揮が楽しみだ。【柏原誠】

 ◆星野氏の発言 14日の明大祝勝会で柳を前に「カーブはカウントを取るだけにしとけよ。あれで勝負したらポコンといかれるよ」と指摘。18日のCBCラジオに電話生出演した際は「柳はいいぞ。考え方も、体も、気迫もいい」と新人王の最有力候補としながら「あのしょんべんカーブはプロでは通用しない。カウントを取るにはいいけど。もっと腕を振ってカット気味に投げないと」と厳しかった。