宮城・石巻市は20年東京五輪で、野球の米国チームのキャンプ地に立候補している。東日本大震災翌年の12年、MLB(メジャーリーグベースボール)の支援を受けて石巻市民球場がリニューアルしたことを機に、現役大リーガーを招いての野球教室など、さまざまなイベントを開催し「野球の街・石巻」をアピールしてきた。

 その1つとして、本来は首都圏でしか開催されないNPB(日本野球機構)主催の「アンパイアスクール」が11月、東北では初の試みで、石巻市民球場で開催。NPBの友寄正人審判長(59)、全日本野球協会(BFJ)の中本尚規則委員長(66)らプロ、アマ、それぞれ国内トップ6人が講師を務め、全国から84人が参加。指導した森健次郎審判員(53)は「石巻の野球熱は高いと聞いていた。開催できて感無量です」と熱い指導を行った。

 アンパイアスクールの開催には、石巻市の佐藤茂宗副市長(42)が尽力。7月、主催のNPB、BFJに直接要請して実現した。佐藤副市長は「自治体が要請しての開催は全国初。『野球の街・石巻』をもっとアピールしていきたい」と力を込め、最大の目標を「2020年東京五輪ではキャンプ地として、野球の米国チームを誘致したい」と語った。

 東日本大震災発生後、石巻市民球場は自衛隊の救援活動の拠点となった。自衛隊は約5カ月で撤収したが、グラウンドは隊員らが寝泊まりするテントで埋まり、芝の状態は悪化。さらに地盤沈下の影響もあり球場としては使用不可に。同市の水押球場にも仮設住宅が立ち並び、野球ができない環境になった。

 そんな状況下、MLBら4団体が「TOMODACHIプロジェクト」として球場の改修費・約8000万円を石巻市に寄付。12年12月、石巻市民球場は全面人工芝となり、オープニングセレモニーには当時ヤンキースのカーティス・グランダーソン(36=現ドジャース)が参加して祝福。石巻市は感謝の気持ちを込め、「TOMODACHI」の文字と、MLBのロゴをグラウンドに刻印した。

 今年1月、石巻市はMLBへ、キャンプ地誘致活動への協力を正式に要請した。佐藤副市長は「復興が進んだのは世界のおかげだということを見ていただける。ぜひ米国代表に来ていただいて、市民の『野球熱』で恩返しがしたい」と夢を膨らませた。【林野智】