球場近くで緊急逮捕劇が起きた広島で、阪神が王者カープの独走に待ったをかけた。延長10回、ウィリン・ロサリオ内野手(29)が決勝の2号2ラン。ミスから失点する重苦しい連敗で迎えたカード3戦目。足を使った攻撃で追いつき、助っ人の1発で一矢を報いた金本阪神。さあ、5月反攻だ!

 試合前の練習中、松山刑務所大井造船作業場から脱走していた平尾容疑者がマツダスタジアム近くで緊急逮捕のニュースが流れた。上空をヘリが舞う。そんな球場から目と鼻の先で起きた騒動にも目もくれず? ロサリオがフェンスの向こうに決勝弾をかっ飛ばした。

 同点で迎えた延長の10回、1死一塁で広島一岡が投じた真ん中高め146キロの直球をフルスイング。空に高く上がった打球は真っ赤に染まる左翼スタンド2階席に飛び込んだ。ロサリオはダイヤモンドをゆっくりと1周し、本塁を踏みしめると同時に両手を広げ、天を仰いだ。

 「チームを勝利に導くことができて本当によかった。なかなか思うように打てなかった。最後は集中して打席に入った。結果が出てよかった」

 開幕カードの4月1日の巨人戦以来20試合ぶりとなる2号2ラン。ロサリオにとって本塁打とは聞かれると「自分の一部のようなものなのかと思う」と返した。4番の久々の一発に金本監督は「いいところでやっと土俵際というかね、そこからひっくり返したみたいなホームランだね」と絶賛した。

 守備での悔しさを晴らした。前日29日はバティスタの一塁ファウルゾーンへの飛球を捕球できず。その後、試合を決定づける本塁打を放たれた。この日も初回、3回と2度の「邪飛」を捕り損ねた。そんなミスをひと振りで取り返した。「それまでうまくいかなかったんですけど、それも試合の一部と思って切り替えてやった結果が出てよかった」。

 独自の取り組みの成果だ。さまざまな方法で調整を試みる。あるときはバランスボールを股の下に挟みながら、フリー打撃を行う。平野打撃コーチは「打つときに体重が前に行ってしまっていた。バランスボールを挟むことで、力を内側に残し、よりボールにパワーを伝えることができる」と説明。工夫を重ねたことが成果となって表れた。

 開幕から本調子とはいかなかったが、この日で6試合連続安打。日本の野球にも適応し始めた。「なかなか結果が出ていなかった中で、ここ6、7試合でだんだんと形はつかめてきた。このままいけばっていう自分の期待もありました」。虎の主砲の劇的弾でチームも連敗をストップ。いよいよ浮上してきたR砲が5月の猛虎打線をけん引していく。【古財稜明】