流行語大賞などない時代の流行語だった。「権藤、権藤、雨、権藤」。61年、中日に新入団した権藤は、球宴までの前半戦で17勝を挙げた。大げさでなく、7月上旬のスケジュールがそのまま流行語になった。「今度も、今度も、何度も」マウンドに立った。

堀本律雄(巨人)が雑談の中で話し、世に広まったといわれる。「中日は権藤しかおらんのか? 権藤、雨、旅行日、権藤、雨、権藤や」。2人は7月11日に対戦し、堀本が完投勝ちした。2-1。堀本には「セブンイレブン(7月11日)いい気分」。権藤は5回2安打2失点で降板した。

勝てるチャンスが来たなら、完投直後でも救援に走った。「チャンス(たんす?)にゴンゴン」。8月27日の阪神戦ダブルヘッダーでは1日2勝した。第1試合は2失点完投。第2試合では2回1/3を無失点に抑えた。この年、429回1/3、5808球を投げた。昨年両リーグで最多の菅野智之(巨人)が202回、3129球。権藤の前には、さすがの菅野も肩(形)なし? 

高校野球では、球数制限を設けようとする動きがある。勝たなあかんが「過多はあかん?」。2年目の権藤は30勝しながら、肩は悲鳴を上げていた。「投げたらあかん」。5年目、野手に転向した。【米谷輝昭】