DeNA飯塚悟史投手(22)が特別な思いを胸にマウンドに上がった。「日本生命セ・パ交流戦」日本ハム戦に先発も、勝ち投手の権利まであと2死に迫った5回につかまり降板した。18日に故郷・新潟で起きた地震に胸を痛め、勇気づける投球をしたかった。試合は9回1死二塁、大和の左中間二塁打でサヨナラ勝ち。飯塚の粘投も報われた。

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マウンドを降りると、思わず「クソっ」と声が漏れた。飯塚は、何度も、何度も天を仰いだ。ベンチに退いても、一点を見つめたまま。吹き出す汗をタオルで拭くこともなく、乾いた喉に水分を流し込むこともなく、ただ、ため息を何度もついた。

今日にかけていた。3点のリードをもらい、臨んだ5回。1死一塁から代打・清宮に右翼線への二塁を許し、1死二、三塁とピンチを広げた。次打者・西川には、一塁線を破られ、2点適時三塁打で、1点差となったところで降板。勝利投手目前の場面で、悔しい投手交代となった。「自分にとっては今年初めての1軍マウンド。開幕戦の気持ちで挑みたいと思います」。登板前日の18日に、緊張した面持ちで話していたが、白星で飾ることはならなかった。

いろんな思いを胸に、マウンドに上がった。前夜、新潟県で最大震度6強を観測した地震が発生した。新潟・上越は自身の生まれ故郷。最も震度が強かった下越地域とは、距離が離れており、幸いにも家族は安全だった。それでも、津波の発生が報じられるなど、気が気ではなかった。そんな状況下で巡ってきた今季初登板。人一倍に強い思いがあった。

本来なら、開幕ローテに名を連ねていた。だが、直前で右肘の張りを訴え、ここまで2軍暮らしが続いた。故障を治すことを最優先に、2軍では主に直球の力強さに重点を置き、トレーニングを積んできた。「ストレートで押せている感覚は2軍でもあった」と自信もつかんできた。「自分でチャンスを逃してしまった。またチャンスをいただけたので、そのチャンスに応えたい」と悔しさを胸に刻み、故郷を思い、挑んだ今季初登板の舞台は、ほろ苦さが残った。【栗田尚樹】