相手の準本拠地で粘りの勝利をつかんだ。楽天は序盤から最大5点リードするも2度追いつかれる苦しい展開。それでも延長11回に西武の投手陣の自滅を誘い、一挙4得点。松井裕樹投手(23)らブルペン陣が地方球場のクセのあるマウンドを克服するなど、前回登板の経験を生かした。5時間を超えるロングゲームを制し、7月30日から続いた10連戦を5勝4敗1引き分けと勝ち越した。

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一振りもせずに、勝利をつかんだ。5時間2分の激闘を制し、平石監督は「みんないい形でつないでくれた」と振り返った。

延長11回、先頭打者の銀次から見極めた。西武の7番手マーティンの制球がつかない。フルカウントからの6球目を見送り、四球で出塁。続く田中はストレートの四球で無死一、二塁。続く渡辺佳が冷静に決めた。初球、144キロ直球を投前にバントで転がした。捕球したマーティンは三塁封殺を狙うも、たたきつけるような悪送球。ボールが三塁ファウルゾーンを転がるうちに、銀次が勝ち越しのホームを踏んだ。この回、西武の投手陣は5四死球。熱戦の最後に自滅を誘った。

同じ轍(てつ)を踏まなかった。4月9日以来、今季2度目の県営大宮球場。前回は地方球場ならではの軟らかいマウンドに投手陣が苦しみ、6四球と制球に苦しんだ。適応しなければ、勝利は近づかない。この日の試合前、守護神松井が中継ぎ陣に言葉をかけた。「ブルペンのマウンドの角度が高過ぎるので、投球練習は少し前に出て投げた方がいい。捕手の方には少し下がってもらえば、ちょうどいい」。前回登板の経験を刻み込んでいた。

その助言が生きた。西武の中継ぎ陣が7四死球だったのに対し、楽天は2四球。前回登板で3四球と乱れた森原は、この日無四球で1イニングをピシャリと抑えた。相手の準本拠地ながら“地の利”を働かせた。10連戦の最後を勝利し、平石監督は「ここをつかみに行かないと。置いていかれるわけにはいかない」と言葉に力を込めた。崩れた相手を尻目に、勝利をもぎ取った。【島根純】