ソフトバンクを支える人々にスポットを当て、随時掲載する「支えタカとよ」。今回は用具担当スタッフの村上誠一さん(49)です。

数え切れない、目に見えない「準備」のおかげで選手たちは思い切りプレーすることができている。まさに「縁の下の力持ち」と呼ぶにふさわしい仕事をしているのが、ソフトバンクの用具担当スタッフ村上さんだ。ヤフオクドームでナイターがある日は選手たちより早い午前中に球場入りし、準備をスタート。試合が終われば、選手たちが去ったベンチの片付けなどを済ませ、試合終了から約2時間後に球場を後にする。

試合で使うユニホームや帽子、ヘルメットの準備はもちろん、試合前練習で使う道具や器具の管理も村上さんの仕事だ。近年では「鷹の祭典」などでユニホームの種類も多い。それぞれに帽子などの付属物も違うため、細かいチェック作業が必要になっている。

最も神経を使うのが、ビジター遠征の際の「荷出し」作業だ。チームの道具だけでなく、選手それぞれのグラブやスパイク、ユニホームなど試合で使用するものを一斉に試合会場に送り届ける。忘れ物はないか。遠征先で使うユニホームの種類はどうか。細部にわたって確認しながら、選手を促して準備を進める。遠征中に選手の1、2軍入れ替えが発生することもあり、イレギュラーケースへの対応も当たり前のようにこなす。

村上さんはチームのスケジュールの約1カ月先をシミュレーションしながら動いている。「この時期(9、10月)は日程が変わることも多い。1試合、1試合で移動するケースもあります。当日に飛行機が動くのかどうかとか、天気にも気を使いますね」。台風や交通事故などの影響で交通状況が変わることも想定し、常に2~3のルートを確保しながら予定を組んでいる。「結局、(他のルートは使わずに)キャンセル料を払って、ということが多いですが、常に準備はしています」。取り越し苦労になることがほとんどだが、万が一への備えが安心してプレーに集中できる環境をつくっている。

村上さんにとっても、一番うれしいのはチームの勝利だ。優勝すれば、選手たちとともに、スタッフの家族も優勝旅行で羽を伸ばすことができる。「ここだけは、(荷物出しは)全く関係ないです(笑い)」。このときばかりは、荷出しはすべて選手の自己責任。村上さんもプレッシャーから解放され、“旅”を満喫できるオフを楽しみにしている。【山本大地】

◆村上誠一 むらかみ・せいいち。1970年5月31日、熊本県生まれ。熊本工から88年ドラフト4位で指名され89年のダイエー元年から投手としてプレー。90~91年に6試合に登板。94年は打撃投手を務めていたが、テストを受け阪神に入団し95年から99年までプレー。その後ホークスに戻り打撃投手、用具係を務める。通算23試合登板、0勝0敗。右投げ右打ち。