プロ野球の発展に大きく貢献した野球人に贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が13日、都内で開かれ、ソフトバンク工藤公康監督(56)が2年連続で選出された。4度目の受賞は、ソフトバンク王貞治球団会長に並んで歴代最多。CSファーストステージ第2戦から日本シリーズまで10連勝という無類の強さで、3年連続日本一を決めた手腕を評価された。

選考委員の座長を務めた王会長は「選手の用兵とか、思い切ってベテラン選手を休ませたり、なかなかできないことをやって勝った。大変素晴らしかった」と、工藤監督の決断力をたたえた。

中西委員からは、選手起用を工夫してリーグ優勝に導いた巨人監督、菊池と浅村の主力2人が抜けながら2連覇を達成した西武辻監督を評価する声が上がった。杉下委員も原監督の名前は挙げたが、故障者がいてもバックアップメンバーをうまく起用した工藤監督の采配を高く評価した。

一方で監督だけでなく、ソフトバンクという球団そのものの組織力が大きかったという意見も一致した。ドラフト会議での指名や外国人を的確に補強する編成の力、若手の育成システム。また「チーム戦略室」のデータ分析は他の球団を圧倒しており、短期決戦で効果を発揮した。

正力賞の対象は「プロ野球両リーグの競技者(選手、監督、コーチ、審判員)」で、個人を選ぶことになっている。王会長は「組織の力が大きい場合は、組織そのものにあげてもいいんじゃないか。範囲を広げることを検討しただけないかということはお願いしました」。来年からの検討課題として、規定の変更を事務局に要請したことを明かした。

来年の選考委員会までに主催の日本野球機構(NPB)と日本テレビ放送網、読売新聞社の3者で合意されれば、20年から組織が受賞対象に加わる可能性が高い。同賞は77年の創設以来、規定が変更されたことはない。

◆選考委員 王貞治(ソフトバンク球団会長)杉下茂(野球評論家、解説者)中西太(同上)山本浩二(同上、欠席)門田隆将(ジャーナリスト)

◆正力松太郎賞 日本のプロ野球の発展に大きな功績を残した正力松太郎氏を記念し、1977年(昭52)に制定された。プロ野球界に貢献した監督、コーチ、選手、審判員を対象に、選考委員が選出する。受賞者は日本一に輝いた監督が多く、最多は4度選ばれた王貞治氏と工藤公康氏。04年に米大リーグのシーズン最多安打記録を更新したイチロー(マリナーズ)、13年に24勝0敗でチームの初優勝に貢献した田中将大(楽天)に特別賞が贈られた。賞金500万円。