“DeNAファン心のふるさと”として名高いテレビ神奈川が「おうち時間に盛り上がろう! プレイバック熱烈LIVE」と題して、ベイスターズの名勝負をピックアップ放送している。

開幕を待ちこがれるハマっ子は当然、チェックを欠かさない。放送直後は、ツイッターのトレンドランキングで上位に食い込むこともある。20日午後7時からの放送は、昨年9月4日、4番に入った筒香のサヨナラ2ランで阪神を競り落とした1戦。

横浜の夜空を突き進む筒香の本塁打は、見た人すべてを前に向かせる力に満ちている。日刊スポーツ復刻版で余韻をもう1度。

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4番の一振りで、首位巨人に2・5差に迫った。DeNA筒香嘉智外野手(27)が延長10回1死一塁で阪神能見からサヨナラ2ランを放った。8月8日の広島戦以降、約1カ月間2番打者を務めていたが、この日、4番に復帰。最大4点差を追う展開をチーム一丸で追いつき、主砲の1発で勝ちきった。頼れる男を中心に逆転優勝へ突き進む。

 

横浜の、いや、日本の4番だと証明する放物線だった。延長10回1死一塁。筒香はカクテル光線とともに、願いを浴びた。「ホームランかっ飛ばせ、つーつーごー!」。鳴り物の消えた夜空に響く応援歌。カウント2-1からの4球目、阪神能見のスライダーを逃さなかった。思い切りしばき上げ、右翼席最上段へとぶち込んだ。「田代さんが早く決めてこいって言ってたんで。あわよくばと思ってました」と4時間18分の熱闘にサヨナラを告げた。

魔法をかけたのは大洋の4番だった。打席に向かう直前、ベンチで背中をたたかれた。「何とかせえ!」。田代チーフ打撃コーチの大きな手だった。新人から見守ってきた師に思いを託されていた。

田代コーチ 俺の場合は不振で4番から6番になったことがあってよ。それでも打てなくてさ。そしたら、その時の関根監督が「やっぱ田代には似合わねえ」って言ってくれて、4番に戻った。それがうれしくてさ。4番っていうのは顔なんだな。やっぱりゴウには4番が似合う。2番じゃねえよ。何とかしてくれる。打てなくてもさ、誰よりも声を出してチームを盛り上げる。つらい時に、救ってくれる。それが4番の姿だよ。

チームを勝たせるのが4番の役割。脈々と受け継がれてきたバトンだった。

だからこそ、応えた。この日はメジャー流の2番起用から8月7日以来、約1カ月ぶりの4番復帰戦。ジリジリと相手に重圧をかけた。第2打席で右翼線へ痛烈な安打を放つと、6回はストレートの四球。「4番の責任感は違う。相手に回したくないような打者、1番嫌だと思われる打者になりたい」と何かを起こす雰囲気をまとい続けた。

最大4点差をはね返し、首位巨人とは2・5差まで詰め寄った。「点差が開いても、負ける雰囲気がベンチ内になかった。そういうところで成長している」と主将として士気の高さも感じる。「9月の最後で、決まる。全員が100%の力を発揮できるように」。さぁ、勝負の9月。優勝争いで、巨人にサヨナラとは言わせない。【島根純】