#開幕を待つファンへ 2020年プロ野球の楽しみ方を提案します! ロッテ石川歩投手、楽天松井裕樹投手の両先発は「表情」に絞って追跡。躍動した両軍のルーキー野手にもフォーカスしました。球場に足を運べなくとも、ポイントをグッと絞ると見どころがギッシリ詰まっています。

   ◇   ◇   ◇

スイッチはどこかで入ったのだろうか。ロッテ石川は、登板した3イニング18分間で表情をほぼ変えなかった。シンカーで見逃し三振を奪っても、甘い球を痛打されても。

表情だけでない。1球1球、リリースの瞬間まではVTRのよう。ロジンバッグをふわりと触り、両手首を使って帽子の位置を整える。小さく首を振り、小さくうなずく。投球間隔は14秒前後に1球。マイペースを貫く。捕手の佐藤も間合いを尊重し、時の移ろいを石川に委ねていた。

淡々と、黙々と。無類のサウナ好き。「サウナに12分から15分入って、水風呂が2、3分。外気浴などで休憩を10分弱。この3セットです」。こだわりの時間軸が、マウンドの所作からも垣間見える。イニング始めもポーン、ポーンと2度飛び、腰を左右にひねること5、6回。いつもこれ、の安心感さえある。

開幕マウンドへも、きっと涼しい顔で進む。井口監督は「まだプレッシャーを乗り越える力がない」と、伸び盛りの若手を大役に選ばなかった。裏返しにある、不動心への信頼-。

ただ1点、マウンド上で感情が行動に出る。球審からボールを受け取ると、右手を無意識に、帽子のつばに寄せる。立山連峰のふもと、夢中で白球を追った頃の名残だろうか。「優しい人です」と後輩は言う。

真顔のままベンチ裏にさがり、戻ってきたのは6回表。荻野が二塁打で出塁すると、他の誰よりも早く大きく、拍手を送っていた。【金子真仁】