ほっともっと神戸で行われる予定だった巨人-ヤクルト戦は、開始直前の雨で残念無念の中止となった。ファンの群像をルポする。

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神戸に着いたのは、午後1時過ぎだった。試合開始は午後6時。4時間以上前にもかかわらず、既に巨人ファンは、ほっともっと神戸へ向かっていた。オレンジのユニホーム姿、Tシャツに巨人のタオル、バックパックを背負った男性の多さに驚いた。

開門は午後4時。球場には入れないと分かっていても、ファンの体は自然と動いていた。徳島から来た自営業・小林敬司さんもその1人。同県出身の増田大の実家が営むお好み焼き店常連の60歳。巨人グアム春季キャンプを見に行ったこともある筋金入り。「やっとですね。やっぱり生で見られるのはいいですよ」と車で約2時間30分かけて来た。

兵庫県の30代・岡田智行さんは、元阪神ファンの彼女と来場した。「昨日はテレビで見てて(阪神)ボーアのホームランに発狂しました」。彼女は岡田さんの熱意に押され、気付けば応援するチームが変わった。そんな多くの思いを乗せた「ほっともっと神戸」。無情にも雨天による試合中止が、午後6時17分ごろに発表された。

台風のような大雨。それでも、ファンの多くは午後7時ごろまで球場を見つめていた。原監督も感慨深く言った。「5000人の方とはいえ、グラウンドから見渡すとかなり詰まっているように思えたし、非常に新鮮で新たなスタートという部分でやっぱり朝起きて緊張感があった」。球音と声援が、重なり合う日がやってきた。【栗田尚樹】

◆ほっともっと神戸 観客は5000人以内に限定し、前後は1列空け、左右は少なくとも3席の間隔を空けた上で販売した。6月29日からファンクラブ会員を対象に「GIANTSオフィシャルチケット」で先行販売を実施したほか、イープラスでも順次先行販売した。売店ではアルコール類の販売は行わず、持ち込みも禁止。売り子は稼働せず、フード販売をクイックメニューに限定した。応援団による応援は行わず、メガホンなどを使った応援などの自粛をお願いした。無料通信アプリ「巨人神戸アラート」を導入。お友だち登録の上で座席情報を記入すると、付近に着席した観客の中から感染者が出た場合にアラート(注意喚起)メッセージを発出する。