阪神藤浪晋太郎投手(26)が2年ぶりの勝利をかけて、今季4度目の先発マウンドに登板するも6回6失点で4敗目を喫した。ルーキー時代から見てきた本紙評論家・中西清起氏がライブ評論でプレーを解説。次戦への課題を語った。
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
広 島 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 6 |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
【広】〇森下
【神】●藤浪、尾仲、望月
試合後
【中西清起氏の評論】
藤浪は6回6失点で勝ち星が遠い4敗目。中西氏は次回登板へ向け、「課題は明確」と指摘しました。
◇ ◇ ◇
結果が示すように、藤浪は今季登板した4試合で一番悪い内容だった。真っすぐやフォークを軸にした縦振りで、縦のゾーンで勝負する投手なのに、カットボールなどを軸に横振りで横のゾーンで勝負しては勝てない。次回登板で修正すべき課題は明確で、新人ながら対照的な投球をした森下がいいお手本だ。入団した頃、いい時の藤浪は、投げた時に右手が地面をたたくんじゃないかというぐらい、上から投げ下ろしていた。大きなフォロースルーが、迫力ある真っすぐを生み出していた。いま1度、原点を思い返してほしい。
試合経過
<1回>
広島
【藤浪の投球内容】
1番西川 初球152キロ直球を中前に運ばれ、無死一塁
2番羽月 フォークで追い込むも、152キロ直球を左前に運ばれ無死一、二塁
3番長野 134キロカットボールをはじき返されるも、二塁手植田が好捕し二塁送球。1死一、三塁
4番鈴木誠 4球目の低めフォークをうまく打たれ、左前適時打で先制を許す。 神0-1広 なおも1死一、二塁
5番松山 カウント2-2から低め155キロ直球をとらえられ、左中間への2点適時二塁打。神0-3広 なおも1死二塁
6番坂倉 148キロ直球で左飛に打ち取り、2死二塁
7番堂林 5球目の132キロカットボールで右飛に打ち取る
中西清起氏の評論
藤浪は初回、4本の長短打を浴びて3失点。その要因を解説しました。
◇ ◇ ◇
初回の藤浪は多くが腕が横振りになっていた。上からたたけていないからシュート回転して甘くなり、球速は150キロを超えていても痛打を繰り返した。長野の4球目、鈴木誠の3球目の真っすぐは縦振りで良かった。その割合を多くすることが2回以降のポイントになる。こういう場合、私が投手コーチの時はベンチに戻ってきたら、フォークやカーブを多投するように指示した。フォークやカーブは縦振りでないと、いいところに決まらない。2回は腕の振りに注目したい。
阪神 3者凡退。
<2回>
広島
【藤浪の投球内容】
8番田中広 6球目のフォークがわずかに外にずれて四球
9番森下 捕犠打で1死二塁。続く西川への初球で、田中広が三盗を試みるも盗塁死
1番西川 内角低めの154キロ直球を右前に運ばれる。続く羽月の2球目に二盗を決め、2死二塁。さらに羽月への4球目、内角低めのフォークが暴投となり、2死三塁
2番羽月 6球目の外高めカットボールで遊ゴロに仕留め無失点
中西清起氏の評論
藤浪は2回、ピンチを招きましたが何とか0に抑えました。
◇ ◇ ◇
藤浪は2回もまだ横振りの投球が多かった。田中広が三盗に失敗した広島のまずい攻めに助けられ、何とか0に抑えた印象だ。右前に運ばれた西川の当たりも低めの150キロ超えで軽々と運ばれた。空振りも取れないし、打者は150キロの球速を感じていないのだと思う。横振りは腕が遠回りするから、打者が距離を感じない。投手は体に巻き付くように上からたたいて、体重移動もしっかりして、腕を打者方向に伸ばせている時がベストピッチ。この投球をされたら打者は投手との距離をものすごく近く感じる。一方の広島先発森下はそれができている。比較して見ていただきたい。
阪神 3者凡退。
<3回>
広島
【藤浪の投球内容】
3番長野 3ボールと先行。フルカウントから149キロ直球が内角高めに大きく抜け四球
4番鈴木誠 真ん中高めに入った2球目の150キロ直球をとらえられ、中前打。無死一、三塁
5番松山 131キロカットボールで遊ゴロ併殺。その間に三塁走者の長野が生還し、4点目を献上
6番坂倉 132キロカットボールで遊ゴロ
中西清起氏の評論
3回は先頭長野への四球と鈴木誠の中前打後、松山の併殺打の間に1点を失いました。
◇ ◇ ◇
長野に与えた四球のラストボールはとんでもないすっぽ抜け。過去3試合、このようなボールはなかった。鈴木誠には中前に落とされたけど、真っすぐがシュート回転している分、甘くなって、あそこまで運ばれて落ちる。球威があれば内野フライのコースだ。何球か縦振りのいい球もあるけど全体的に横振りのまま。「どうしたんだ、藤浪」という感じだ。今季4試合目の先発だが、一番状態はよくない。
阪神 木浪は空振り三振。植田は遊ゴ。藤浪は見逃し三振。3者凡退。
<4回>
広島
【藤浪の投球内容】
7番堂林 3球目の140キロフォークで空振り三振
8番田中広 4球目の141キロフォークで空振り三振
9番森下 5球目の高め151キロ直球で空振り三振。3連続三振でこの試合初めての3者凡退
中西清起氏の評論
4回は7番堂林からでしたが3者連続空振り三振に斬りました。
◇ ◇ ◇
4回はベンチや梅野らのアドバイスもあったのか、フォークも入れて、腕がだいぶ縦に振れていた。だから空振りが取れる。1~3回は、腕を縦に振れるきっかけになるフォークやカーブが少なかった。コーナーを狙う投手ではないので、腕さえ縦に振れれば勝負できる。早いイニングでこの投球をしてほしかったし、それができる投手だから、もったいない。
阪神 3者連続三振。【森下7K】
<5回>
広島
【藤浪の投球内容】
1番西川 フルカウントからカットボールが外にはずれ四球
2番羽月 4球ファウルが続き、5球目の内角低めカットボールで二直。1死一塁
3番長野 外低めのカットボールで空振り三振。2死一塁
4番鈴木誠 7球目の132キロカットボールで空振り三振
中西清起氏の評論
藤浪は5回、先頭西川に四球を与えるも3番長野と4番鈴木誠を連続三振に仕留め、無失点に抑えました。
◇ ◇ ◇
5回の藤浪は、長野と鈴木誠を同じカットボールで空振り三振に斬った。でも腕は1~4回以上に横振り。本来の投球ではなく、ごまかして打ち取った印象だ。藤浪は威力のある真っすぐと、フォークを軸にした縦ゾーンで勝負する投手。横振りになると良さが完全に消えてしまうし、5回はフォーム自体を大きく崩してしまっていた。4回の3者連続三振は縦に振れて、いい時の藤浪に戻っていただけに残念。5回の結果だけに満足してはいけないし、これが続くと怖い。
阪神 大山は右飛。ボーアは空振り三振。梅野が中前に安打! 阪神は森下から初安打。しかし、木浪は二ゴロに倒れ得点ならず。【森下8K】
<6回>
広島
【藤浪の投球内容】
5番松山 2球目に132キロカットボールを投じ、痛烈な当たりもボーアが好捕し一ゴロ
6番坂倉 3球目の150キロ直球を左前に運ばれ1死一塁
7番堂林 131キロカットボールで三ゴロ。2死二塁
8番田中広 申告敬遠で2死一、二塁
9番森下 5球目の真ん中に入ったカットボールをとらえられ、左翼線へ2点適時二塁打を許す。6失点となり、なおも2死二塁
1番西川 142キロの外低めフォークで空振り三振
中西清起氏の評論
藤浪はラストイニングとなった6回、投手の森下に三塁線を破られるタイムリーを浴び、2点を失いました。
◇ ◇ ◇
5回に出た悪い兆候が失点につながった。長野と鈴木誠から、結果オーライで連続三振を奪ったカットボールが、効果的と踏んだのだろう。だが、相手打者から見て、これが一番迫力がなく、打ちやすいボールだ。投手の森下に打たれた2点二塁打はそのもの。まだヒット1本だった新人投手に三塁線を破られる完璧なヒットを打たれては…。藤浪の入団から3年間投手コーチとして見てきて、いい時は縦振り、悪い時は横振りと傾向がはっきりしている。それが顕著に出た投球になってしまった。
阪神 植田が空振り三振。3者凡退。【森下9K】
<7回>
広島(阪神は2番手の尾仲が登板)3人で抑える。
阪神 サンズが見逃し三振。3者凡退。【森下10K】
中西清起氏の評論
6回6失点で降板した藤浪に対し、広島森下は7回まで1安打0封と安定感が光りました。
◇ ◇ ◇
広島先発の森下は藤浪と対照的な投球だった。腕を上から下にたたけていた分、真っすぐに威力があった。ご覧になられた方も、違いがよく分かったのではないか。真っすぐは140キロ台が多く、球速そのものは藤浪以下だったが、阪神打線はスピードガン以上のキレを感じていたと思う。球持ちも良いし、球種も豊富で的を絞らせないピッチング。阪神打線の調子どうこう以上に、投球内容が素晴らしかった。
<8回>
広島 堂林が四球で出塁も無得点。
阪神 3者とも内野ゴロで凡退。
<9回>
広島 羽月、長野が安打で出塁も阪神3番手の望月が無得点に抑える。
阪神 先頭の代打糸井は左邪。続く代打福留は直球で見逃し三振。近本が中前に安打。中谷も直球見逃し三振。試合終了。【森下12K】プロ初完封勝利
スタメン
【広島】
1(中)西川
2(二)羽月
3(左)長野
4(右)鈴木誠
5(一)松山
6(捕)坂倉
7(三)堂林
8(遊)田中広
9(投)森下
【阪神】
1(中)近本
2(右)中谷
3(左)サンズ4(三)大山
5(一)ボーア
6(捕)梅野
7(遊)木浪
8(二)植田
9(投)藤浪