意地の猛反撃だ。新型コロナウイルスに7人が感染した阪神は、2軍がウエスタン・リーグ中日戦(ナゴヤ)で0-10から10-11まで迫った。

前日25日に1軍の糸原、陽川、岩貞、馬場、2軍の浜地の5選手、1軍スタッフ2人の感染を発表。濃厚接触者などを含めて10人の出場選手登録を抹消し、2軍から9人が1軍に緊急昇格していた。一夜明け、鳴尾浜残留組から2選手を2軍に補充し、わずか17人で臨んだ一戦。ドタバタ劇にうろたえず、若虎軍団が全力を出し切った。

   ◇   ◇   ◇

ライナーが左翼フェンス上部で阻まれる。マルテは二塁進塁を諦め一塁ベースに戻ると、思わず苦笑いだ。9回表。あと数十センチ飛距離が伸びていれば、同点ソロが生まれていた。それでも最後は10-11。夕刻の日差しに照らされた若虎軍団の表情は晴れやかだった。

「チーム状態がどうのこうのじゃない。ファームの選手たちにとってはチャンスだから。みんな、なんとか上に行きたいって言う選手ばっかりなんだから」

平田2軍監督の言葉を借りるまでもなく、選手の目はギラついていた。浜地の新型コロナ感染を受け、前日25日の2軍中日戦は中止。同日夕方には1軍から陽性者、濃厚接触者など計10人が出場選手登録を抹消され、2軍の9人が遠征先の名古屋から上京して、1軍に登録された。この日の2軍戦は鳴尾浜で残留練習していた俊介、伊藤隼を急きょ名古屋に呼び寄せ、わずか17人で戦った。

内野手登録者は3人だけ。練習では有事に備えて藤谷が未知に近い二塁を守った。外野手登録の板山は珍しく二塁で先発した。ただでさえやりくりに苦しむ中、5回を終えて0-10。それでも諦める気配はない。

3回には指揮官がマウンドに向かい、大炎上する横山を熱く叱咤(しった)する。6回はドラフト2位井上がプロ初の満塁弾で5連打。7点を追う8回、先頭2番板山の右中間へのソロからドラフト5位藤田、育成ドラフト1位小野寺の適時打が飛び出す。最後は打者一巡の板山の適時打でこの回6得点を決めた。

たった2人の控え野手は伊藤隼が代打、岡崎が代走で出場。ベンチに残ったメンバーは投手の福永と牧だけだった。今後も総力戦を強いられるが、平田2軍監督は「若い子にどんどんチャンスが出てきた。大変だということはない」。皆、チャンスを逃すまいと必死だ。【佐井陽介】

▽阪神板山(5打数で1発を含む4安打2打点)「ドタバタで入れ替えがあった中、(1軍に)呼ばれなくて悔しい思いがあった。でも、どんな状況でもやることは変わらないので。絶対に(1軍昇格の)チャンスはあると思ってやろうと常に考えている。続けていかないといけない」

▽阪神ドラフト5位藤田(プロ初長打を含む2安打2打点)「練習でやっていることが出来ている。少し(バットの)ヘッドが下がる癖があるので、上からたたく意識でやっています」