巨人の記念日を主砲がバットで彩った。岡本和真内野手(24)が、初回に先制の25号2ラン。本塁打のタイトルを争う阪神大山に1本差をつけた。26年前の「10・8決戦」では、当時の4番落合博満が先制弾を放っていた。年号が変わろうとも、4番の貢献度は変わらない。チームは優勝マジックを「14」とした。

  ◇   ◇   ◇

「10・8」は、巨人の「4番」の血が騒ぐのか。時は令和。2020年の「4番」は第89代の岡本。0-0の1回2死二塁。カウント3-1からの5球目、外寄りの低め148キロ直球にバットを繰り出した。見逃せば、ボールだったかもしれない。伝統ある球団の主砲には関係ない。「打てると思ったら打ちにいくんで。来た球を素直に打ち返そうと」。逆方向の右翼スタンドへかち上げた。打球は「25 岡本ホームラン」のボードを持ったファンの前で着弾した。

10月8日と言えば、1994年(平6)の「10・8決戦」。レギュラーシーズン最終戦を前に、勝率が並んだ巨人-中日による優勝決定戦がナゴヤ球場で展開された。「国民的行事」とまで呼ばれた一戦。26年前の巨人の「4番」は第60代落合。2回先頭から先制の15号を右翼へ放ち、優勝に大きく貢献した。

伝統を継承するかのように-。当時はまだ生まれてもいない岡本が同じ右打ちの4番として、同じ先制弾を同じ右翼へと運んだ。9月30日広島戦以来、30打席ぶりの1発。本塁打王争いを繰り広げる阪神大山に1本差とする今季25発目をマークした。打点も76に伸ばし、リーグ独走。初のタイトルも見えてきた中でも「意識はしていない。まずは1試合、1試合、勝ちに貢献出来るように頑張りたい」と、たぎる血を抑え、泰然自若に努めた。

「10・8決戦」に「5番」でスタメン出場した原監督は「昨日はあんまりいいところがなかったというところで、本人も気分よく、いいホームランだったと思います」と前日は4打数無安打に終わっていた主砲の1発に目を細めた。優勝決定戦ではなくとも、これでマジックは「14」。原監督は「どんな日でも勝つということが、いいですね」と締めた。「4番」岡本を中心に、連覇へ着実に歩みを進めている。【栗田尚樹】

 

○…巨人の現代の「5番」丸も、3戦連発で巨人の記念日を彩った。3点リードの3回、初球の大飛球は右翼ポール際への際どいファウルとなったが、フルカウントからの7球目。今度は切れることなく右翼スタンドへ21号2ランを着弾させた。「いい間合いでしっかり振れている。岡本さんがいいホームランを打ってくれていいイメージで打席に入れています」と感謝した。

 

◆「10・8」 94年10月8日、中日と巨人が優勝をかけてナゴヤ球場での最終戦で対戦。前の試合まで両軍とも69勝60敗。同率首位同士の最終戦決着は史上初で、巨人長嶋監督は「国民的行事」と名付けた。試合は落合のソロ本塁打で巨人が先制。直後に同点とされるも、3回に落合の適時打で再び巨人がリード。その後は槙原-斎藤-桑田と先発3本柱で継投して6-3で勝利。4年ぶりのリーグ優勝を決めた。