汚名返上の時を信じる。阪神川相昌弘臨時コーチ(56)が22日、1軍キャンプ初日から3週間超に及んだ指導期間を終えた。3年連続12球団ワースト失策の守備力改善を任され、早出から個別メニューまで内野陣の基礎練習反復を徹底。ナインに意識改革を促し、秋の「V奪回祝勝会」参加を願った。

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最後の「熱血川相塾」を終えた午後5時過ぎ。塾長は思い出深いサブグラウンドで生徒たちと記念撮影に収まった。糸原も大山も北條も皆、笑顔。「最初は一方的に練習内容とかを伝えていたけど、選手から疑問や質問が来るようになった。選手のやろうとする姿勢、変化はすごく感じました」。指導期間の充実が詰まったワンシーンだった。

臨時コーチ最終日。夕方の1時間20分、内野手7人の特守に普段通り付き添った。まずは両膝を地につけてのハンドリング練習を指導。続けて矢野監督と並んで40分間ノックバットを振り続けた。現役時代には遊撃部門でゴールデングラブ賞を6度獲得。「一番大事」と確信する基礎練習の反復をフィナーレに選んだ。

打球へのチャージの仕方に下半身を使った送球のコツに…。動画撮影も続けて技術を伝授する上で、1軍キャンプ全内野手が参加したLINE(ライン)のグループも作成。時には大リーグ屈指の名遊撃手だったオジー・スミスのハンドリング練習動画も紹介した。

「練習を積み上げないといけない。そこを自覚しないことには進歩はない」。継続を求め、ナインの意識改革に納得。昨季まで3年連続12球団ワースト失策の守備力に「良くなると信じています」と強調した。別れのあいさつでは「優勝したら、祝勝会に呼んでいただければ、ぜひ駆けつけます」とエールも送った。

選手としても指導者としても宿敵巨人で長年活躍。読売新聞スポーツアドバイザーでもありながら守備技術、そしてバント技術を惜しみなく伝えた。その懐の深さと影響力に、矢野監督は「もう、めちゃくちゃデカい。来てもらえて本当に良かった」と最敬礼だ。

指揮官はこの日の「かっこいい大賞」を問われると「川相さんやろ」と即答した。誰もが効果を実感した指導を無にするわけにはいかない。虎戦士たちは今後、名手の教えを体に染みこませる作業に移る。守備力改善を実現させ、秋には塾長に美酒を浴びせたいところだ。【佐井陽介】

▽阪神木浪(川相臨時コーチの指導について)「収穫はたくさんありました。それを継続してやることが恩返しだと思う。自分がうまくなるために継続することが大事。基礎が本当に大事だなと思った。そこをしっかりやれば、もっとうまくなれると思いました」

▽ 阪神中野(川相臨時コーチの指導について)「川相さんに教えていただいて、それを反復練習することによって自分の中で守備の感覚が変わってきたと思う。非常にいい勉強になった。(今後も)分からないことがあれば連絡を取って聞いていければと思います」

〈川相臨時コーチの教え〉

◆熱血始動(1日)午後5時40分までメイン、サブの両グラウンドを3往復。守備では、打球の右から入り、巨人坂本勇のように大きなステップで投げる足の運びを各選手に繰り返させた。バント指導では「転がす方向さえちゃんとすれば、打球を殺さなくてもいい」と独自の理論を伝えた。

◆投手陣にバント技伝授(3日)全投手を宜野座ドームに集め、約40分間講義。まず言葉で説明し、往年の技も披露。「苦手な方向を狙うより、得意な方に転がせるよう極めろ」と伝えた。投手への指導とあり、打者側から見た苦手なコース、高さも説明。

◆佐藤輝に合格点(13日)佐藤輝の三塁守備に一定の評価。「思ったより器用に動ける。ハンドリングも意外に柔らかくて、センスはある」。投内連係ではバントチャージについて教え込んだ。

◆中野にバドミントントレ(14日)新人中野にバドミントンのラケットを持たせ、ゴムボールをネットに打ち込ませた。前でしっかり腕を回すように動かすための訓練で、強い送球を投げることを狙った。