これが矢野阪神の底力だ。「日本生命セ・パ交流戦」で、阪神北條史也内野手(26)が決勝打を含む2打席連続タイムリーで勝利に貢献した。左足首の負傷から1軍に復帰し、2番二塁で先発出場。いきなり結果を残した。今季は佐藤輝らルーキーの活躍が光るが、中堅も負けてはいない。オリックスとの関西ダービーは1勝1敗。交流戦の成績も4勝4敗の五分とした。

   ◇   ◇   ◇

この歓声を浴びるために、はい上がってきた。北條は三塁ベース上で手をたたき、左手を挙げた。ベンチでは矢野監督が両手を挙げている。1軍昇格即先制打のヒーローに、大きな拍手が注がれた。

「チャンスで回ってこい! という気持ちで待っていました。しっかりランナーをかえすことができてよかった。僕も(先発の)秋山さんみたいに、粘り倒してやろうと思って打席に立っていました」

3回裏2死二塁。この試合前までパ・リーグ防御率トップの宮城に食らいついた。フルカウントから150キロ直球を打ち返すと、しぶとく三遊間を破った。

1点リードの5回裏1死一、二塁でも再び三遊間を破った。結果的に1点差での逃げ切り勝ち。「ファームでやってきたことを全部出そうと思って」。殊勲の2打点は無我夢中で戦った結果だった。

4月24日の練習中に左足首を負傷。2軍でのリハビリの日々で、自分と向き合った。「打撃のレベルアップだけ考えて。毎日毎日、何か1つでも多く考えてバッティングをしていました」。ロハスが2軍降格したこの日、1軍昇格即「2番二塁」で今季初スタメン。初回2死満塁のピンチでは、伏見の二遊間へのゴロに飛びつき、アウトをもぎ取った。スタートからフルパワーで爆発した。

起用が的中した矢野監督は「いつも気合入ってるよ、アイツは。きょうが特別でもないし」と言うと「準備とか、そういうことは怠らない選手。上がってきてすぐ結果が出たっていうのは、気分もいいと思うし、チームも救ってくれたところがある」とたたえた。巨人が勝利しゲーム差は4のまま。それでも、チームにとって貴重な右打ち内野手の復活は、ただの1勝以上の価値がある。

お立ち台では同じくヒーローに選ばれた秋山への質問にフライングで返答し爆笑を誘った。ようやくマイクを向けられると「すいません、もういいですか」と、待ってましたと言わんばかりに思いがあふれ出た。

「やっぱりファンの皆さんがいる中で野球するというのは本当に幸せなことなので、本当に感謝しています」

この景色を見るために、はい上がってきた。【中野椋】