阪神藤浪晋太郎投手(27)は右拳を握ったまま、ほえた。

「しびれる場面だった。どんな形でもゼロでしのげればと思っていました」

同点で迎えた7回裏2死三塁、フルカウント。6番渡辺から外角カットボールで空振りを奪うと、感情を爆発させた。

初回に2点を先制しながら追加点を奪えない。じわりじわりとジャブを打たれ、試合を振り出しに戻された7回にマウンドへ。昨季のリリーフ体験が生きた。

「もちろん緊張はしたけど、テンパることなく、落ち着いて入れました」

四球と犠打で1死二塁とされてから粘った。5番王柏融を152キロのスプリットで二ゴロに仕留め、最後は注文通りの空振り三振。一気に流れを引き寄せた。

制球の乱れが影響して、4月24日に出場選手登録を抹消された。開幕投手を任されながら、シーズンインから1カ月足らずでの2軍降格。気落ちしてもおかしくない状況でも、挑戦を選択できる向上心の塊だ。

5月1日の由宇球場。オフから採用していたワインドアップに1度見切りをつけ、ノーワインドアップで再スタートした。はた目からは急激な変化にも映ったが、本人は冷静だった。

「やっていることはずっと一緒。リリースにどれだけ力を集約できるか、安定させられるか。始動の形はそれまでの過程でしかない」

信念を貫き、復調して1軍舞台に戻ってきた。

この日は先頭3番近藤への4球目、押し込んでファウルにした1球が球場スピードガンで168キロを計測した。打球速度の表示とみられるが、札幌ドーム全体からは期待混じりのどよめきも。1イニング無失点の最速は158キロ。強い真っすぐは健在だ。

岩崎、小林が抜けた有事のブルペンで、1軍復帰2戦目にして今季初ホールド。矢野監督は「晋太郎、馬場、スアちゃんっていう形は、今はこれかなと思っている」と見通した。

「ピシャッと抑えるに越したことはないけど、どんな形でも粘り強くゼロに抑えていければ」

自覚たっぷりの背番号19が当面、セットアッパーを任されることになりそうだ。【佐井陽介】

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