ソフトバンクのウラディミール・バレンティン外野手(36)が、「日本生命セ・パ交流戦」の古巣ヤクルト戦でNPB通算300本塁打を達成した。5回の3号ソロで、外国人選手では10年ラミレス(当時巨人)以来4人目の大台に到達。同時に通算1000安打のW快挙となった。7回にも2打席連発の4号2ラン。チームは交流戦が18試合となった15年以降で初の同一カード3連敗を喫したが、バレ砲お目覚めは希望の光だ。

   ◇   ◇   ◇

打球の左翼ホームランテラスへの着弾を見届け、バレンティンは心の底からほえた。体重100キロの巨体を弾ませながら、ダイヤモンドを一周。自軍ベンチではヤクルト時代からの同僚、川島と思いっきり抱き合った。

「(ダイヤモンドを)回っている時は、リラックスした感じと興奮した感じ。個人成績として簡単ではなかったので、達成できてよかったよ」

5回にヤクルト高橋のチェンジアップを捉え、今季3号ソロ。NPB通算300本塁打と通算1000安打を、同時に達成した。

ヤクルトの前で、節目の記録に到達。7回にも2打席連発となる4号2ランで、怪力健在を古巣に見せた。「9年間お世話になったチーム。ヤクルト相手に打てたことはうれしかったよ」。移籍1年目の昨季は、長期離脱した15年を除けば自己最少の9本塁打。不振で2軍降格も味わったが、ようやく大台に乗せた。

悲しむ友を救ったことがある。5月10日。前日9日に亡くなった川島の母多惠子(たえこ)さんの告別式が、長崎・佐世保市で行われた。当時2軍のバレンティンは、車を飛ばして佐世保に向かった。お互い燕のユニホームを着ていた11年から10年来の友人。涙にくれる川島を励ました。川島も「ココ(バレンティン)が来てくれた」と感謝した。

その川島が、8回に今季2号ソロ。固い絆で結ばれた2人が、20年6月25日以来のアベック弾を決めた。川島は「ココとアベックホームランを打つことができて素直にうれしい。ココ、おめでとう」と祝福。バレンティンにとって、最高の記念日に最高の友人が祝砲を撃ってくれた。

300本塁打は外国人選手では4人目で、1000安打は同15人目の快挙。対ヤクルトは初アーチで、12球団から本塁打を記録した。「これからさらにチームの勝利に貢献していきたいね」。常勝軍団に、心優しい大砲がいる。【只松憲】