粘り勝った! 広島九里亜蓮投手(29)が8回途中まで無失点の好投で、42日ぶりの6勝目を手にした。1回無死一、二塁のピンチを招くなど走者を背負う投球が続いたが、勝負どころで要所を締めた。8連勝と勢いに乗っていた巨人を止め、チームの自力V消滅も阻止。新型コロナウイルス感染から復帰後3試合目で、弾みの白星を手にした。

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8回は1球も140キロを超えなかった。九里は毎回のように走者を出しながらも、好調巨人打線を相手に内外角を突き、かわし、粘って得点を許さなかった。8回は2死一塁からウィーラーを歩かせてマウンドをバードに譲ったものの、新型コロナウイルス感染から復帰後最長の7回2/3、今季最多タイ124球を投げ切った。42日ぶりの勝利で、負ければ自力優勝が途切れるチームの危機を救った。

「本当に山口さんがいいピッチングをしていたので、何とか先に点をやらないように投げました」

投手戦を演じたが、8回1死まで無安打無失点の巨人山口とは対照的だった。三者連続三振で滑り出した山口に対し、九里は先頭から内野安打2本で無死一、二塁。前日3人で9打点の中軸を迎えた。「あの時点では変に絶対ゼロ点で抑えると思うと、良くない投球をしてしまう」。力むことなく、打者にだけ集中した。丸を初球シュートで二ゴロに打ち取り、併殺。岡本を歩かせたが、重盗を阻止して無失点で切り抜けた。

全投球の約半分が140キロ超と力で押す山口に対し、九里の140キロ超の球は全体の3割にも満たなかった。それでもシュートやスライダー、チェンジアップなど多彩な変化球を駆使。高め球も有効に使い、外野を越える打球も、外野を抜かれる打球も打たせなかった。前回登板後は辛口評価だった佐々岡監督も「しっかりと攻めている中の投球だった。いい攻め、投球だった」とたたえた。最後に笑ったのは、九里だった。

復帰後2試合は5回、4回で降板し、自身2連敗だった。「1軍に戻って2試合、ふがいない投球をしてしまった」。言い訳は飲み込み、先発の柱としての責任を口にした。復帰3戦目で見事な復活。5月19日の巨人戦以来、チームトップ6勝目を手にした。「何とかチームに早く勝ちを付けたい中で勝てたので、まずは最初に奥さんに勝てたことを報告できれば」。チームだけではない。隔離期間も献身的なサポートを続けてくれた夫人にささげる白星となった。【前原淳】