阪神矢野燿大監督(52)が9日、大阪市内の阪神電鉄本社で藤原崇起オーナー兼球団社長(69=阪神電鉄会長)にシーズン終了報告を行った。3年契約の最終年を終えたが、来季の続投が正式に決定。単年契約とみられる。今季は12球団最多の77勝を挙げたが、優勝したヤクルトに0ゲーム差でV逸。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージも3位巨人に敗れた。進退のかかる22年シーズン。「手本」として挙げたのは意外な人物だった。

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CS敗退から2日。この日、来季続投が正式決定した矢野監督が、22年シーズンにかける覚悟を語った。

矢野監督 まだ上を目指してほしいという激励の言葉をもらった。この悔しさを明日からぶつけていきたい。挑戦を続けていく。

3年契約最終年の今季は77勝56敗10分けの2位で、優勝したヤクルトにゲーム差なしの勝率5厘差で屈した。前半戦を首位で快走したが、夏場に失速。10月に盛り返したが、ライバルに1歩届かなかった。指揮官として何が足りなかったのか-。矢野監督はデッドヒートを演じた敵将の名前を挙げ「その差」を語った。

矢野監督 優勝したヤクルトの高津監督なんかを見ていると、1年間、どう戦うかというところを、すごくやり切った結果なのかな(と思う)。目の前の試合を全力で勝つこともそうなんですけど、1年間、どう戦っていくか。そこに(僕も)考えをもうちょっと足していく必要がある。

肌で感じたスゴ味があった。高津監督は9月末までは先発投手陣に中6日以上の間隔を空け、2年目奥川は負担を考慮して中10日以上を開けて9勝を稼がせた。「スタメンも変えてもいいかなと。戦いながら、そういうこともやっていっていいのかなと思った」。たとえば青柳が先発の試合では、苦手の山田を休ませ、積極的休養日とした。いくら苦手でも、34本塁打の3番をスタメンから外すのは勇気のいること。だがすべてはゴールテープを逆算した高津流の起用法だった。

ムチの入れ方も際立った。勝負どころの9月、「絶対に大丈夫」の言葉でナインを鼓舞。優勝が迫ると、「腹くくっていったれぃ!!」という直筆メッセージを選手ロッカーに張り出し、ナインの心を一つにした。

この日のオーナー報告で、藤原オーナーから心技体で何が一番大事かと問われた矢野監督は、「まず心から」と応じた。「オレ自身の成長もしていかないとダメ」と引き締める指揮官は、ライバルの人心掌握術にもヒントを得たようだ。

矢野監督 いいところをどんどん伸ばす部分も必要な選手が多い。どういうチームをつくっていくか、みんなでしっかり話し合ってやっていきたい。

10日からはV奪回に向けた秋季練習が始まる。4年目来季は矢野監督にとっても進退をかけた背水のシーズンになる。敵将からの学びを強さに変え、来季こそ頂点をつかむ。【桝井聡】

▽矢野監督のオーナー報告

◆19年10月18日 前年の最下位から、シーズン終盤に6連勝し、大逆転で3位浮上に成功。だがファイナルステージで巨人に敗退。「来年ジャイアンツを倒したい思いが強くなってきている」と打倒巨人への熱い思いを隠さなかった。

◆20年11月12日 2位に順位を上げたが、優勝した巨人とは7・5ゲーム離された。「泥臭い1点というか、そういうものをどう取っていくかも課題」。久慈コーチに「バント担当」と肩書をつけるなど、1点にこだわる布陣を敷いた。