今秋ドラフトで西武から2位指名された筑波大・佐藤隼輔投手(21)を育て、スポーツ選手の動作解析を専門とする同大学の川村卓准教授(51=硬式野球部監督)が17日、日刊スポーツの取材に応じ、阪神佐藤輝明内野手(22)の下半身強化について解説した。球団の新人記録を更新する24本塁打の一方、左膝痛が出た後半戦はリーグワースト記録を塗り替える59打席連続無安打など振るわない時期が長かった。【取材=中野椋】

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佐藤輝はシーズン中に左膝を痛めた影響で、秋季練習ではランメニューを行っていない。一方でフリー打撃やロングティーではガンガン打ち込み、けがの影響を感じさせないスイングを見せている。練習をサポートする仲野トレーナーは「足の筋力をどれだけ増やせて、膝への負担をどれだけ減らせるか、というところが最大の課題」とウエートトレーニングなどで下半身強化に取り組ませていると明かした。

下半身を鍛えることにより、どういうメリットがあるのか。

川村氏 佐藤君のようなスラッガータイプはスイングが強くて体がぶれやすい。下半身を鍛えることで、スイングに対して体が負けなくなると思います。時計は針の中心がぶれないからきれいにくるりと回る。打撃も同じ。下半身がしっかりすれば体の中心が動かない。特にホームランバッターはボールの下を打つ繊細の作業になるので、ちょっとでもぶれたらダメ。

仁川学院時代に本格的にウエートトレーニングに取り組み、飛躍へのきっかけをつかんだ佐藤輝。今回、「けがの功名」で強靱(きょうじん)な下半身を手にした先には、どんな姿になっているのか。

川村氏 体がぶれずにコンパクトにバットを振れるから、確率が上がると思います。本人は強く振っていないように感じるかもしれないけど、ホームランになったり。僕たちはどうしても豪快なスイングを求めますが、力感なく飛ばせるのが一番。ホームランの量産もですし、三振も減ってくるのでは。下半身がどっしりすれば、頭が動かないので。そこも期待できると思います。

一方でランメニューができないことに、危険も潜んでいるという。

川村氏 ウエートトレーニングで膝周辺の筋肉が肥大化して、バランスを欠くという恐れがある。太ももの前を鍛えたら後ろが弱くなって、ランメニュー再開後に肉離れすることも多々あります。筋肉を鍛えたら、走って各部位に違和感がないかチェックすることが大事。今は走ることをセーブしている状態だと思いますが、もちろん球団のスタッフがサポートしていますし、本人も気をつけていると思います。

けがを乗り越え、さらにスケールアップするため、鍛錬の秋が続く。