オリックスが「SMBC日本シリーズ2021」第3戦で痛恨の逆転負けを食らい、ヤクルトに2連敗した。

だが、2点を追う6回には本塁打王の杉本裕太郎外野手(30)がシリーズ初アーチとなる一時同点の2ラン。7回には首位打者の吉田正尚外野手(28)が一時勝ち越しの2打席連続二塁打を放つなど、3、4番の奮起で勝利への夢を見させた。この敗戦で、オリックスが日本一の場合は神戸での胴上げとなった。まずは第4戦に勝って、土俵中央に押し戻したい。

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杉本は一塁ベースを全力で駆け抜けると、ギュッと口元を引き締めた。1点を追う9回2死一、三塁。右方向へ飛んだゴロは一塁にさばかれた。ゲームセット。ベンチに戻ると、悔しさを押し殺すように少し顔を紅潮させた。

十分に打線の力は見せつけた。その象徴が杉本の同点2ランだった。1-3の6回無死二塁。鈍い音を残した飛球は、そのまま右翼席に吸い込まれた。小川の直球に差し込まれたがパワーで逆方向に押し込んだ。東京ドームは、どよめきと歓声に包まれた。

「少し詰まっていたし、まさか入るとは思わなかった。何とかスタンドに届いてくれた」と自分でも驚く1発。「ラオウ」こと杉本は、すっかりおなじみになった右手を突き上げる「昇天ポーズ」を決めた。日本シリーズ1号で、一気に流れを引き寄せた。ミス絡みで失点した悪い流れは、これでオリックスペースに変わった。

CSファイナルは2戦目の決勝2ランでMVPに輝いたが、「力んでしまった」と反省した。この第3戦からは本塁打が出やすい東京ドーム。テーマは欲を捨てることだった。「打球が上がれば勝手に(スタンドに)入るので」。本塁打の打席も、最低でも二塁走者の吉田正を進塁させるため、意識は右方向。力みの抜けたスイングが、同点2ランを生み出した。

7回にはもう1人の役者、吉田正も続いた。2死一、二塁から左腕田口のスライダーをしぶとく流し打ち、4-3と一時勝ち越しとなる二塁打を放った。

投手戦が続いた今ポストシーズン、オリックスにとって初めてと言える「打ち合い」だった。敗れはしたが、パ・リーグ王者の誇る両主砲が見せた底力は、第4戦以降への希望になる。【柏原誠】