阪神、ロッテで活躍し、日刊スポーツ評論家に就任した鳥谷敬氏(40)が、虎の守備力向上へのポイントを提言するキャンプ前企画。3回連載の第2回は「ミスをした後」に着目。エラーの内容と傾向を分析する重要性を説いた。【取材・構成=佐井陽介】

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鳥谷氏は昨年11月7日、テレビ生中継のゲスト解説で甲子園を訪れている。阪神が巨人とのCSファーストステージ2戦目に敗れた一戦。虎は2点リードの3回表、遊撃中野の失策から3失点で逆転を許した。先頭打者吉川の正面付近へのゴロをはじいたミスを、大先輩は冷静に分析していた。

鳥谷氏 このエラーがなぜ起きたのか、ということです。自分が確認した限り、出だしのバウンドには合っていた。ただ、2個目のバウンドがちょっと変化して、この変化に少し体が引く形になってはじいたように見えた。あのゴロにしても、もし三塁方向ではなく真下にはじけていたら、アウトにできた可能性もある。そういう物の見方をしていくのもいいのかなと思います。

どんな名手にもミスはある。特にまだ経験値の浅い若手ならなおさらだ。ミスの内容と傾向を分析できるか否か。鳥谷氏は過去の自分も思い返し「人は意外に自分のことは見えていない。失敗しないと分からないものなので」と言葉に力を込める。

鳥谷氏 例えば書類の不備があったとします。その原因を探れば、前の日にお酒を飲んだ時にこんなミスが出てしまっているなとか、自分の傾向が出てくる。エラーなんかも、かみ砕いていくと意外とヒントが隠れているものなんです。「あっ、自分は消極的になった時にエラーが出ているな」とか、「思い切りすぎた時にエラーが出るけど、あの場面は1歩引いても良かったな」とか、内容を見られればまた対処の仕方も変わってくる。「次もエラーしたらどうしよう」とビクビクするのではなく、次の日はそのエラーを頭で描きながら練習して、マイナスの部分を取り除いていく。そうすれば、エラーの質も変わってくるかもしれません。

鳥谷氏は昨年12月、テレビ番組内で守備の極意を明かしている。「バウンドが合わない時は焦って体に力が入るもの。でも硬くなった体に打球が当たると、大きく跳ねてしまう。そんな時はどれだけ力を抜けるか。脱力すればグラブも下に下がるので」。この一例も、ミスの内容を突き詰めた結果の発見といえる。

鳥谷氏 プレゼンをするにしても、一番大事な日を迎える前に、自分が気を付けるところを分かっておいた方がいい。ずっとうまくいっていたのに、大事な本番で失敗する人もいる。それよりも、先に多く失敗してミスの傾向を分かっている人の方がいいと思います。

だからこそ、12球団ワースト失策数という現実にもひるまないでほしいと、先輩は願う。(25日に続く)