ロッテ二木康太投手(26)は2万人以上が見守るお立ち台で、あえて表現した。

「たかだか1試合、勝っただけなので」

チームの4連敗の後の2連勝に、7回無失点で大いに貢献した。それでも笑みは少ない。

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昨年10月16日、スタジアムを包むため息は、マウンドにも確実に届くほどの大きさだった。優勝マジック8で迎えた試合に先発し、2回途中5失点でKO。開幕投手を任され、期待に応えられず、最後も背信の結果に。CSにもベンチ入りできなかった。「直後はすごく、気持ちが沈んでいました」と振り返ったこともある。

シーズン被本塁打24本は12球団ワーストだった。直球の制球が生命線。その直球が走らず、変化球が浮いたところを狙われた。フォーム修正の選択肢も浮かんだが「シーズン中に大幅に変えるのはちょっと怖いなというのがあって…」。成績は大きく改善できず、わずか5勝に終わった。

優勝争いの最中で、2軍での再調整になった。「まっすぐを強くする」をテーマにリスタート。「去年はこう、力が抜けるというか、うまく伝えられていない部分があったので」。力の伝え方も研究しながら、独特の間合いのフォームを再構築した。

この日は初回、変化球で連打を浴びる立ち上がり。そこから直球の球速が145、146、147…と表示される。去年より5キロ近く速い。「初回にしっかり腕を振るのは、いつもやっていること」と意識は変えない。勝負どころでは球を長めに持つなど、20年には指標上でも“最も出塁しづらい投手”とされた右腕に、らしさが戻りつつある。

お立ち台では「たかだか1勝」と謙虚に口にした。ダグアウトに戻ると「ホッとしました」と言い「正直…」と明かした。

「正直、1発目の試合、自分には開幕戦というか1発目の試合だったので、ものすごく大事な。もしここで打たれたら、やっぱり出番がまたどんどん遅くなってくると思うので。そういう意味では、すごく大切な試合だったので」

事実上“6人目”で開幕ローテに滑り込んだ。立場を自覚するからこその「たかだか1勝」でもある。「1年間ずっと戦力として投げ抜くことを目標に」「自分が投げた試合は全部勝つつもりで」。強い言葉を並べ、立ち向かい、笑顔が似合う18番を取り戻す。【金子真仁】