阪神が勝率5割ターンを決めた! 前半最終戦のDeNA戦(甲子園)は、大山悠輔内野手(27)の犠飛で挙げた1点を4投手の継投で守り切った。開幕9連敗など借金は最大「16」まで膨らんだが、奇跡ともいえる前半戦での借金完済。広島と同率2位に浮上した。今季限りでの退任を公表している矢野燿大監督(53)は「後半、ドラマを起こす舞台が整ったと思う」と球宴後の熱い戦いをにらんだ。

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3万4085人の大拍手が心地いい。ナインをベンチ前で出迎えた矢野監督が、喝采を全身に浴びる。3連勝で最大16あった借金をついに完済。奇跡の5割ターンに甲子園のボルテージもマックスだ。

矢野監督 3月、4月から考えたらここまで来られるというのはね、簡単に想像できるわけではなかった。後半、ドラマを起こす舞台が整ったと思う。

主演は大山だ。4回1死二、三塁。浜口の143キロを芯で捉え、中犠飛で1点を先取した。「なんとか先制点を、と思っていた。最低限ですが仕事ができてよかった」。5回2死二塁では桑原の左前打を素早く処理し、二塁走者の生還を許さず。ロドリゲスの加入で左翼に回る背番号3は「試合が始まったらしっかりやるだけ。練習から準備はしている」。セリフは謙虚で、力強い。

悪夢の開幕9連敗。台本通りにいかなかった日々はもう、過去のことだ。6月以降は26勝13敗1分け。「誰1人諦めている選手はいない。これからもっともっと上を目指して頑張りたい」。6月10本塁打で逆襲の先頭を走ってきた男が、チームの総意を代弁した。

今シーズン限りで退任を表明している矢野監督のラストシーズン。ひと山もふた山も乗り越え、2位タイに浮上。首位ヤクルトに11ゲーム差も、虎の目は死んでいない。

矢野監督 ここから本当のドラマを起こすには、(ファンの)みなさんがドラマを信じてくれて、僕たちが「ドラマを起こすんだ」という気持ちをさらに高めた後半にしていかないとダメ。ヤクルトとの差を考えるというより、僕たちの戦いをどれだけできるか。ドラマを信じた中で貫けるか。ぜひ、ドラマを起こしたいと思います。

残り49試合。筋書きのないドラマを連発し、奇跡のストーリーを完結させる。【中野椋】

▼阪神が、今季最大16あった借金を完済した。4月21日DeNA戦に敗れ、3勝19敗1分けで借金16に到達。ここから43勝27敗1分け、勝率6割1分4厘の快進撃でついに勝率5割へと押し戻した。借金16以上から勝率5割に戻したのは10年ヤクルト(最大借金19)以来5例目で、阪神は66年(最大借金19)に次いで2度目。借金16以上を2度も完済したのは阪神が初めてだ。4月23日に再び借金16となって迎えた同24日以降の阪神は、投手陣が健闘。69試合のうち半分以上の38試合を2失点以下に抑え、この間のチーム防御率が2・10。圧倒的な投手力がチームを押し上げた。

▼阪神が借金16以上を抱えたシーズンは過去19度。前回返済に成功した66年は、8月14日広島戦に負け、34勝53敗2分けで借金は19にまで膨らんだ。次戦から29勝10敗3分けの勝率7割4分4厘と突っ走り、完済に成功。10月7日広島戦ダブルヘッダー第2試合に勝ち、ついに貯金1とした。もっともこの後3連敗し、最後は借金2で閉幕した。

▼阪神が46勝46敗2分けの勝率5割で前半戦を終えた。球宴前を5割以上で終えたのは、昨年の5割9分3厘に続き2年連続。またAクラスでのターンは、17年以来5シーズン連続だ(20年は球宴の開催なし)。

▼阪神の完封勝利は今季14度目。年間21度に達するペースで、70年22度以来52年ぶりの20度超えも狙える。なお2リーグ分立後の阪神のシーズン最多完封勝利は32度。

○…佐藤輝がリーグトップ28本目の二塁打で前半戦を締めくくった。2回にDeNA先発浜口の143キロ直球を左中間へ飛ばし、2位のヤクルト山田と5本差とした。背番号8は17日から早出特打に参加し、その日の中日戦から全試合で安打を放っている。「しっかり練習してもっと打てるように頑張りたいと思います」と話していた主砲が後半戦でも安打を量産していく。

○…近本がまたも美技を見せた。1点リードの6回。DeNA牧の中堅への浅いフライに猛ダッシュし、最後はスライディングキャッチ。前日23日も嶺井の打球を頭から飛び込みこむスーパープレーを披露していた。試合前、矢野監督は中野とともに前半戦の野手MVPに近本を選び「全試合フルイニングで出てくれていますし。3番でもしっかり近本らしくやってくれている。非常に助かっています」と称賛した。

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