異例のダブルストッパーでミラクルVへ! 阪神カイル・ケラー投手(29)が、今後も状況次第で守護神として起用される案が浮上した。岩崎優投手(31)の疲労軽減が目的で、金村暁投手コーチ(46)が方針を示した。ケラーは開幕2戦とは別人で、直近は12試合連続で無安打無失点の無双ピッチ。首位ヤクルトを8・5差で追う残り40試合。メイン守護神はセーブ王を狙える左腕としつつ、助っ人右腕が最終回を担うパターンも増えそうだ。

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阪神はシーズンが最終局面にさしかかる夏場を、ダブルストッパー態勢で乗り切る。リーグ3位の25セーブを挙げる岩崎は、後半9試合中、6試合に登板。6日の広島戦では9回に4失点し、3点リードを守れずサヨナラ負けを喫した。チーム最多タイの43試合に登板する左腕の疲労軽減のため、金村投手コーチは「コンディションを見ながら、ケラーに助けてもらうのもある」と説明。点差、連投などの展開、状況次第で9回に助っ人右腕が起用されるパターンが増えそうだ。

ケラーは来日遅れの調整不足のため、開幕から2試合連続でセーブに失敗したボロボロな姿とは別人の安定感だ。6月7日の再昇格後、14試合でわずか1失点。6月19日のDeNA戦以降、12試合連続無安打無失点と圧倒している。7月中旬にコロナ陽性判定を受けて離脱したが、復帰後も好調キープで0を継続中だ。

150キロ台中盤の直球と当初から持ち味だったカーブ、そこに日本で新たに磨きをかけたフォークを駆使。7日の広島戦では1回2奪三振で来日初セーブを挙げた。矢野監督は「ケラーもしっかりいってくれたのは、またプラスアルファの要素ができて、いろんなオプションも使える」と高く評価。安定ぶりは代役守護神にふさわしい。

岩崎も初のセーブ王を狙える位置にいる。リーグトップのヤクルト・マクガフは2差で射程圏。金村コーチも「ここまで頑張ってくれたスグルに、タイトルも見えてきているので、気持ち的には頑張ってもらいたい」と親心をのぞかせる。「だからといってがむしゃらに投げさすのもいけない」とし、「最後の40試合、間違いなくハードになると思う。うまいことマネジメントしてあげながら」と守護神の軸は岩崎に置きつつ、ケラーも起用する構想を明かした。近年では異例のダブルストッパー態勢だ。

首位ヤクルトとは、最大17ゲーム差を半分の8・5差まで詰めて残り40試合。最短10日にも自力Vが復活するところまで猛烈に挽回した。目指す奇跡の大逆転へブルペン力は勝敗に直結する。左と右、タイプの違う両輪がフル回転できる環境を整え、虎が一気にギアを上げる。【中野椋】

 

◆阪神のダブルストッパー 近年の守護神はウィリアムスや久保田、藤川、呉昇桓、ドリス、スアレスら1人が担うケースが多かった。故障や不調などで途中交代した年はあったが、2人が並立したダブルストッパーは85年にさかのぼる。吉田義男監督は前年までの抑え左腕山本和行をメインに、状況に応じて若手右腕の中西清起も抜てきした。

山本は開幕2戦目、4月14日広島戦の初セーブで初勝利に導いた。中西はバース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発が出た4月17日の巨人戦がこの年初登板。1点差に追い上げられた9回途中から3人で抑え、プロ初セーブを挙げた。

山本和は33試合で5勝11セーブと奮闘したが、9月4日の中日戦の試合前練習で、左アキレス腱(けん)を断裂。セットアッパーも兼任していた中西が1人守護神となり、10月16日ヤクルト戦で胴上げ投手になった。登板63試合で11勝19セーブをマークし、最優秀救援投手賞を獲得。阪神は球団唯一の日本一に輝いた。

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