ロッテ佐々木朗希投手(21)が24日、ZOZOマリンで契約更改交渉を行い、5000万円増の来季年俸8000万円(金額はいずれも推定)でサインした。

4月10日のオリックス戦(ZOZOマリン)で達成した完全試合をもって、その話題性は球界の枠を超えた。海外にも広く名を知られた。

緊迫、熱狂の2時間30分だった。あの試合で中堅を守っていた藤原恭大外野手(22)は、ネット裏最上段にあるスピードガンを何度も何度も見たという。

「甘い球でも打ててないというか、ど真ん中のフォークとか真っすぐでも空振ってたので、相当エグいというか。朗希だからできる技かなと思いながら見てました」

なかなか打たれない。いつ飛んでくるかが普段より分からない中での集中に、後日談も鮮明だ。

「エラーした時は、自分の活躍とかで取り戻すことってできると思うんですけど、完全試合の時のエラーって取り返しのつかないプレーになるので。いつもと違ったプレッシャーはありました。怖いなというか。(エラーしたらネットなどで)たたかれるんだろうなと思いながら、みんなで言いながら守ってました」

ドラフト同期入団の佐藤都志也捕手(24)は完全試合の日、一塁でのスタメン出場だった。藤原らと同じように身が引き締まった。「プレッシャーはすごく感じました。正直(打球が)飛んでこないでほしいなというのはありましたね。送球とかも怖いなっていうところは」。

試合中はあえて、ほとんどマウンドに近寄らなかった。「変に声をかけるというよりも、ランナーを出すことがなかったんで、今のいいリズム、テンポで投げさせる方がいいんじゃないかと思って」。ただ、マウンドの背番号17に緊張は見えなかった。「ほんと、楽しんでいるように見えたので、あの時は」。

大阪桐蔭で全国制覇の藤原。聖光学院-東洋大の佐藤都。アマ球界のエリートコースを歩んだ2人でさえ、心のブレを感じてしまうような試合展開だった。

しかし、主役である佐々木朗は投げ終えて会見場に現れると「しっかり心をコントロールしながら最後まで投げ続けることができたかなと思います」と振り返った。「期待を感じながら投げていたんですけど、そこまで気負うことなくいけたかなと思います」とも言った。心のコントロール。実戦で投げ始めたプロ2年目から、よく口にしていたフレーズだ。

「何試合も投げるので、再現性とか高くなきゃいけないと思うので、体も心も、本当に大事だと。調子良かったら次はどう臨むのか、悪かったらどう臨むか。心のコントロールができないと、投手なのですぐボールに出ちゃうと思うので」

特にはストライク率が8割を超えた試合もあるプロ3年目。マウンド上やマウンド前後での平静が、ボールを操る技術を高めた。佐藤都は後日の回想で、メンタル面にも言及している。

「日常的な会話でもそうですし、自分の像を作っているなって感じはすごく見えます。なんか、年数を重ねていくのもあると思うんですけど“これが佐々木朗希だ”っていう自分のビジョンを。みんなも、先輩後輩かかわらず朗希のことを認めている感じがすごくして、それに対して朗希が自分のビジョンというのを描いているように見えるんですよね」

完全試合を経て、世間からの注目や認知、好奇の目は間違いなく増えた。それでもシンをぶらさずにやり抜いた。佐々木朗はこの日の契約更改会見で言った。

「特に…僕は変わらなかったので。何もなかったかなと思います」

ストイック、完璧主義と周囲は言う。自分を律する心の強さを証明した1年だった。【金子真仁】