コイの滝登りじゃ。広島が1回5失点のビハインドをはね返した。6回2死満塁で田中広輔内野手(33)の2号満塁弾で同点に追いつき、7回にライアン・マクブルーム内野手(31)の犠飛で勝ち越した。開幕カード3連敗を喫したヤクルトを迎えた本拠地3連戦はいずれも雨が降る悪天候だったが、広島が水を得た魚のような快進撃で3連勝返し。一気にリーグ首位に躍り出た。

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絶好機に微動だにしなかった広島新井監督が、ド派手なガッツポーズをかました。4点を追う6回2死満塁。田中が1ボールから代わったばかりのヤクルト星の149キロを思い切り引っ張った。「真っすぐが速い投手なので、詰まらないように。みんながつないでくれたので、その勢いを借りながら入ろうかなと」。雨が上がった広島の空に打ち上げた白球は、赤いポンチョを着たファンが待つ右翼席へ。雨に打たれながら信じたファンとともに、ベンチの指揮官も右拳を突き上げ雄たけびを上げた。

1回に5点を失いながら2回以降は投手陣が踏ん張り、4回に1点を返した。そして6回に迎えた絶好機。新井監督は打率1割5分の田中に代打を送らず、そのまま打席に送った。「読みと決め。経験がある選手。(代打策は)まったくよぎってない。“思い切っていけ”と声かけました」。信頼というメッセージが、背番号2の背中を押した。

田中は昨季まで2年続けて2桁試合出場にとどまった。昨季は遊撃での出場はいずれも途中出場からの2試合のみ。2軍で若手と交じり白球を追う日々が長くなった。オフには推定1億2000万円の減額を受け入れた。「俺はまだ戦力で見ているぞ」。真っすぐ目を見て伝えられた、新井監督の言葉が引き上げてくれた。

今季初勝利は6日阪神戦の雨天コールドだったが、本拠地でのヤクルト3連戦もすべて雨が降る環境だった。初戦の雨天コールド勝利に始まり、終盤まで降り続いた前日は土壇場9回2死から逆転サヨナラ。この日も一時雨脚が強くなり49分の中断を挟んだが、5点差をひっくり返した。雨にぬれたコイ戦士が水を得た魚のように、開幕3連敗のヤクルトに3連勝だ。雨降って地固まる-。4連敗スタートから一気に首位まで登り詰めた。【前原淳】