阪神が広島に同一カード3連勝を逃し、リーグ最速10勝到達はお預けとなった。首位はキープしたが、ヤクルトに並ばれた。痛い逆転負けだが、明るい材料はあった。「6番右翼」で先発した井上広大外野手(21)が初回に916日ぶりにタイムリーを放った。19日の初スタメンから2戦連続安打。将来の大砲候補が打線に活力を与えた。

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同一カード3連勝は逃した。リーグ最速10勝到達もお預けになった。それでも暗くなる必要はない。最終回に見せた追い上げムード。そして、将来の大砲候補の井上が、本拠地で快音を響かせた。1点を追う初回1死満塁。広島アンダーソンの内角直球をフルスイング。詰まりながらも、右前に運び、一時同点の適時打を放った。20年10月16日のヤクルト戦以来となるタイムリー。満員のスタンドはお祭り状態になった。

「(西)純矢が頑張って投げてくれていましたし、こうやって1軍で一緒に試合に出られるのも初めて。強引にならず、しっかりバットも内から出てたのでいい安打になった」

先発西純は19年ドラフト1位で、井上は2位。ポジションは違うが、同じ高卒の同期入団として2軍時代から互いに支え合ってきた大切な仲間だ。初回のタイムリーの直後、井上はベンチ前の西純らナインに向け笑顔でガッツポーズ。西純もグラブをたたいて喜んだ。

沖縄・宜野座での春季キャンプで、井上は1軍の実戦7試合で3本塁打の活躍。岡田監督から「野手MVP」に選ばれた。開幕こそ2軍スタートとなったが、決してマイナスには捉えなかった。「下(2軍)で結果を出さないと、1軍でも結果が出ない。いつでも出られる準備をするだけです」。一時期、2軍戦では1試合3三振と苦戦したが、必死にもがいて乗り越えた。ウエスタン・リーグで打率2割5分8厘、4本塁打と成績を残し、ドラフト1位森下との入れ替わりで1軍昇格をつかんだ。

首脳陣から、打線のカンフル剤として期待されていた。前日19日の今季初先発から2試合連続安打。岡田監督も「井上の立場からするとあないして打点ついてなあ、どういう当たりであろうとな」と目を細めた。低迷していた打線も2試合11得点。「打つほうは上がってくると思うけどな」と指揮官も手応え十分だ。

井上は2回2死満塁で空振り三振に倒れるなど、その後の打席は沈黙。「チャンスで1本出るか出ないかで、本当にゲーム展開が違ってくる。もっと打てるようにやっていきたい」と納得しない。高卒4年目の若虎がガムシャラにバットを振り、猛虎打線に活気を与える。【三宅ひとみ】

◆井上の前回適時打 20年10月16日ヤクルト戦(甲子園)の8回無死一塁から代打で登場。左腕久保から右中間へ適時二塁打を放ち、プロ初安打で初打点を記録した。阪神の高卒新人野手で打点を記録したのは74年の掛布雅之以来46年ぶり。「まさか、1年目でこの舞台に立てると思っていなかった」と振り返り、あいさつ代わりの一打で甲子園を沸かせた。

■阪神井上の23年シーズン

◆2月1日 2年ぶりの1軍宜野座キャンプスタート

◆2月15日 練習試合の楽天戦(金武)で今季実戦1号となる左中間へ特大の3ラン。

◆2月27日 1軍キャンプ打ち上げで野手MVPに選出。岡田監督も「一皮むけたっていうかね。やっとなんかつかんだというか」。沖縄での1軍実戦では7試合でチームトップの3本塁打、10打点を記録。

◆3月16日 打席数確保のため2軍へ降格。岡田監督は「まだ決定したわけじゃないからな」と意図を説明した。

◆3月18日 ウエスタン・リーグ広島戦(鳴尾浜)で2打席連続本塁打。いずれも直球を捉え、「真っすぐを打てたのは良かった。2本目はクイックピッチ。うまく反応できた」。

◆4月18日 ドラ1新人の森下と入れ替わる形で今季初の1軍昇格。この日は出場機会はなかったが、「チームの戦力になれるように。出番があれば準備して、しっかり自分のできる100%を出せたら」。

◆4月19日 広島戦(甲子園)で今季初スタメンで初出場。5回の第2打席に右前打を放ち、「なんとか次につなげたい気持ちだった。これからも結果を出し続けていきたい」。