鉄人が、また打った。右手首と左あばらを骨折した日本ハム江越大賀外野手(30)が、7年ぶりの2試合連続アーチをかっ飛ばした。

2-0の3回2死一、三塁から「待っていた」というロッテ森のスライダーをコンパクトに振り抜いた。左中間へ確信の3ラン。新庄監督は「打った瞬間、スーパーサイヤ人になった感じ。体が大きく見えたもん。オーラで」。あばらは快方に向かっているが、右手首は、まだ痛む。それでも勢い良くバットを放り投げた姿は、頼もしいヒーローそのものだった。

この日から、選手たちは「ヒーロー」をテーマに新庄監督がデザインした、斬新な限定ユニホームを着用。賛否はあれど、選手の評判は悪くない。「本当は襟を立ててプレーしたかったけど暑かったので…」と、お立ち台限定で赤い襟をビシッと立てた江越は「僕も、たまには打つんで。今日来てくれたファンの方はラッキーだったんじゃないかなと思います」と、初のお立ち台で胸を張った。

阪神時代は「ロマン砲」と期待されながら、ロマンだけで終わってしまった。同じく阪神OBの新庄監督の下で、殻を破ろうとしている。グリップの握り方など技術的な指導はもちろん、メンタル面でのプラスが大きい。故障者が続出する中、指揮官からセンター起用を明言され、6試合連続フル出場中。この日の試合前練習では「2三振はいいけど、3三振はダメ」と指令を受け0三振。気楽に打席に立てるようになった。

10日に7年ぶりのマルチ安打を記録して、11日には5年ぶり本塁打。そして、この日は7年ぶりの2試合連続本塁打を含む2打数2安打3打点。直近3試合の活躍は神懸かり的だ。覚醒した江越の勢いは、止まる気配がない。【中島宙恵】

○…新外国人選手のハンソンが初出場した。この日1軍登録され、6回1死で代打起用。8日に契約合意したばかりで背番号94のユニホーム製作が間に合わず、右肘負傷で帰国中のガントの42番を着用して出場した。ロッテ広畑の前に空振り三振も、新庄監督は「1打席じゃ分からない。慣れていけば対応できる選手じゃないかな」と印象を口にした。

○…両アキレス腱(けん)違和感のため欠場していた松本剛が、4試合ぶりに出場した。3番指名打者で先発出場し、初回1死一塁で右前打を放った。「痛みはある。でもまったくなくなるまで待ってたらあれなんで。ある程度つきあいながら。(ヒットも)1日1本、積み重ねて行けたら」。大事を取って指名打者も「(守備も)いつでもいける準備をしていきます」と頼もしかった。

○…上川畑が今季初の猛打賞と気を吐いた。3回2死一、二塁では貴重な右前適時打で、2点目をたたき出した。サヨナラ打を放った7日の楽天戦以降無安打で、11日のソフトバンク戦はスタメンを外れていた。新庄監督から助言を受け「ボールを長く見るために始動を早くすることを意識してきた。練習から悪くはなかった。でもこれを継続していかないと意味がない」と先を見据えた。

○…3月にロッテからトレードで加入した福田光が、古巣相手に大量点の口火を切る先制の適時内野安打を放った。3回2死一、三塁。追い込まれてからの4球目、外の直球をバットの先で拾った。打球は三塁方向へ大きく弾み、ラッキーな内野安打に。「ボテボテがヒットになったり…。バットに当てたら何かがあると思った」。会心ではなくとも、勝利を呼んだ一打に納得顔だった。