6月1日の広島戦で6回1失点(自責0)と好投し、開幕から無傷5連勝を飾ったオリックス山下舜平大投手(20)の投球フォームを、上原浩治氏(48=日刊スポーツ評論家)が解説します。

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高卒3年目のオリックス山下は、1軍登板がない中で開幕投手を務めて話題になった。エースの山本、左腕の宮城がWBCに出場したために回ってきた大役だが、ここまでの投球を見る限り、首脳陣が開幕投手に抜てきした理由も分かる。それぐらい、威力のある真っすぐを投げている。投球フォームはまだ粗削りだが、それだけ「伸びしろ」がある証拠。私なりに感じる改善点を指摘しながら、投球フォームを紹介してみよう。

セットポジションの<1>から、左足を上げている<3>まで安定感がある。左足を高く上げるタイプはバランスを崩しやすく、下半身の筋力の強さとバランス感覚の良さが必要。威力のある真っすぐの原動力になっているのだろう。

<4>~<6>の右腕の動きを見ると、腕が伸びきる手前でボールを持つ手を上げはじめている。これはテークバックを小さくして、腕の振り遅れを防ごうとしているからで「ショートアーム」と呼ばれるもの。近年、流行のテークバックでもある。

ただ、<7>のトップの形はあまりよくない。右の股関節が伸びてしまっているし、上半身も捕手側に突っ込み気味。微妙なタイミングだが、もしこの時点で上半身が突っ込み気味でも、ボールを持つ手が高い位置まで上がっていればいい。しかし右肘が背中側に入り過ぎて高いため、ボールを持つ手が肘よりも高い位置にきていない。

改善するとしたら<5>の形からそのまま<7>の形まで、上半身と下半身が同じタイミングで、投げる方向にむかって勢いをつけていけたらいい。そうなれば球のバラつきは少なくなり、コントロールの精度がよくなる。全身の力をロスなく使えるから、現時点でも160キロ台の真っすぐが投げられるようになると思う。

上半身の突っ込みが早い分、<8>では少しだけ腕が振り遅れ、踏み込んだ左足への体重の乗り方が甘くなっている。それでも<9>と<10>の左腕のグラブの使い方はとてもいい。胸を張った<8>から左肩が開かず、胸を閉じるように腕を振っていけている。

リリースの位置も、頭のやや後ろから押し込むように力強くボールを切っていける。腕が縦にロスなく振っているから、力のある球を投げられる。<11>と<12>のフィニッシュも、左側に体が流れていないし、申し分ない。

写真だけでは分からない部分があるため、5月14日のソフトバンク戦の投球を見させてもらった。まだ左打者へのアウトコースに投げるコントロールがいまひとつ。力を入れると内側に引っかけてしまっているし、外側に抜けてしまうときもあった。これは<7>で上半身が突っ込み気味になり、腕を振るタイミングが安定していないからだろう。

この試合ではフォークの落ちが甘かったが、その原因も個々の部分にあると思う。今後、もっと試合経験を積み、ブルペンでの投げ込みをしていけば投球もカチッとはまってくる。腕の振りの強さは天性のもので、フォーム的にも上からの角度をつけられるタイプ。千賀のような落差のあるフォークも投げられるようになる可能性を持っている。どんな投手に成長するか、楽しみでならない。(日刊スポーツ評論家)

◆山下舜平大(やました・しゅんぺいた)2002年(平14)7月16日生まれ、福岡県出身。福岡大大濠では甲子園出場なし。20年ドラフト1位でオリックス入団。今年3月31日西武戦で1軍デビュー。4月11日楽天戦で初勝利。ここまで7試合に登板し、5勝0敗、防御率0・84。名前の由来は20世紀前半の経済学者ヨーゼフ・シュンぺーター。190センチ、98キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸700万円。