阪神西勇輝投手(32)が古巣オリックスから白星を挙げ、史上20人目となる12球団勝利を達成した。1、2回と立ち上がりに失点したが、その後は踏ん張ってゼロ行進。6回5安打2失点で今季4勝目を挙げた。ベンチで試合の行方を見届けた右腕は、チームメートから記念球を受け取りニッコリ。阪神移籍後、3度目のオリックス戦で勝利を手にし、お立ち台では「家に飾りたいと思います」と、また笑顔になった。

プロ15年の経験を凝縮したような内容だった。初回。先頭広岡の左翼への二塁打から1死三塁のピンチを招き、4番森に初球のストレート系を中前にはじき返されて先制点を献上した。4点援護を受けて迎えた2回にも失点。そこから「勝ちたいという気持ちを1度捨てた」。女房役の梅野とも話し合い「低めの出し入れがうまくいった。自分しか分からない感覚」と修正できた。

18歳で厳しいプロの世界に飛び込み、1個ずつ引き出しを増やしてきた。「最初はクイック、けん制のやり方。スライダーを2種類、3種類…」。ロールプレーイングゲームのような地道に1つずつアイテムを手に入れるような感覚だったという。だからこそ、うまくいかない時に1度マウンドで立ち止まれる。そして修正法が頭に浮かぶ。

特別な感情が湧いてきた。オリックスは自身を育ててくれた特別な球団。ベンチを見れば、知ってる顔ばかりだ。試合終了から少したってから「こうやって最後に古巣に勝つことが出来た。野球を終わった時(引退した時)は覚えているであろう記録」としみじみと語った。これで今季8度目のクオリティースタート(QS=6回以上、自責3以下)と安定感は変わらない。経験豊富な背番号16の存在は、若いチームにとってなんとも心強い。【桝井聡】

▼西勇が古巣オリックスから初勝利を挙げ、現12球団から白星をマークした。セ、パ12球団となった58年以降、全球団勝利は22年岸(楽天)以来20人目。05年の交流戦開始後では、近鉄を加えた13球団勝利を記録した3人を含めて17人目。