あ~疲れた…。阪神が2位広島との首位攻防第2ラウンドを激闘の末に引き分け、首位を死守した。延長12回の4時間56分ゲーム。主役は佐藤輝明外野手(24)だ。1-1の6回、広島森下から逆風を切り裂く12号ソロを右中間最深部席へ。シーズン9本目の甲子園弾は自己最多で、85年掛布雅之の17本以来となる生え抜き左打者のシーズン甲子園2桁本塁打に王手をかけた。0ゲーム差のまま迎える第3ラウンドへ、ド派手な輝アーチが虎のエネルギー源や!

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4時間56分に及んだ延長12回の激闘を終えた直後、佐藤輝の表情には疲労感よりも充実感がにじみ出ていた。一時は勝ち越し弾となる12号ソロを振り返り「手応えは良かったです」と納得した。

試合中盤、一振りでムードを変えていた。1-1の同点で迎えた6回1死。広島森下の2球目、内寄り低めのカットボールを完璧に捉えた。逆風を切り裂き、右中間最深部まで運んだ飛距離125メートル弾。打球が入った瞬間、手をポンとたたいて会心の一撃をかみしめた。

「前の2打席でやられていたので、やり返すという気持ちでした。しっかり振り切ることができたし、逆風に負けずスタンドまで届いてくれて良かったです」

2試合ぶりの1発は一時は勝ち越し弾となる1発だった。右の好投手森下との対戦では昨季4割超え。だが今季は試合前時点で6打数無安打、3三振と快音がなかった。ここまで苦戦していた相手を攻略し、クリーンアップとしての意地を見せた。この日は自身が所属していた少年野球チーム「甲東ブルーサンダース」の子どもたちを甲子園に招待。「見てもらえたので良かった」。少年少女にアーチを贈り、ホッと胸をなでおろした。

3年目となり、兄貴分としての自覚もある。26日の巨人戦。桐敷が1点ビハインドの7回に1軍再昇格即登板した際のことだ。先頭打者をストレートの四球で出塁させると、佐藤輝はすぐにマウンドまで駆け寄った。「毎回心がけています。うまくいかない時は声かけてあげるのも大事かなと」。最終的に無失点投球で白星を手にした桐敷も「だいぶデカいです。視野が狭くなっちゃうので、声をかけてもらえるのは助かる」と感謝する頼もしさが、3年目の佐藤輝にはある。

今季の甲子園アーチは9本目。21年の8本、22年の5本を上回って自己最多となった。生え抜き左打者の甲子園2桁本塁打となれば、85年掛布の17本以来38年ぶりとなる。チームは4時間56分の死闘を引き分けに持ち込み、2カ月ぶりとなる月間の勝ち越しを決めた。「明日も頑張ります」。快挙に王手をかけて迎える首位攻防第3ラウンド。再び一振りで空気を変えたい。【三宅ひとみ】

▼佐藤輝が甲子園で今季9本目の本塁打を放った。阪神の生え抜き左打ち選手では、85年掛布雅之17本塁打以来の甲子園2桁本塁打にあと1とした。ラッキーゾーンが撤去された92年以降では初となる。阪神選手全体での甲子園2桁本塁打の直近は、昨季の大山14本塁打。なお阪神選手の甲子園シーズン最多は86年のバース25本塁打。日本人に限ると、85年の岡田彰布23本塁打。