3番抜てきの阪神小野寺暖外野手(25)が、値千金の逆転三塁打で2連勝に導いた。1点ビハインドの3回2死一、二塁。ヤクルト先発左腕ピーターズ相手に、ファウルで粘った9球目だった。高めのスライダーに食らいついた飛球は右翼線に上がり、追いすがる一塁手オスナらをかわしてポトリ。ファウルゾーンを転々とする間に2人の走者が生還。ラッキーパンチが今季2度目のV打となった。

「泥臭さというか、ああいう汚さも持ち味。汚いヒットでしたけど最高の形になったのでよかったです」

スタメンは8月19日DeNA戦以来今季10度目。当たりは会心ではなかったが、5度目の3番起用に最高の結果で応えた。「毎回チャンスだと思って気合を入れています」。スタメンは3試合連続ヒットで打率は3割3分3厘で好調キープ。得点圏打率は4割2分1厘の勝負強さを発揮した。

勝負の4年目は、「原点回帰」の打撃が成功している。昨季は32試合に出場。4月21日のDeNA戦で代打逆転満塁弾を放って脚光を浴びたが、打率は1割3分6厘と低迷。もう1度自分自身と向き合い、「1発狙い」の考えを捨てた。

「どういうバッターになろうかと考えた時に、人と違うところを伸ばそうと思って。打率だったり、塁に出ることを一番に考えて。もともとの形を見直そうと思ってやってきました」

大商大時代は打率重視のスタイルでプロへの道を切り開いた。その感覚を思い起こすことで、打席の中でも落ち着きを取り戻せた。ボールの見極めにもつながり「技術というよりも、気持ちの持ちようが変わってると思います」。心は熱く、頭は冷静に。自信を持ってゲームに臨めている。

「日替わり3番」の起用に応えた背番号60に、岡田監督は「まあ、あの1本で十分やな、はっきり言うて」とにやり。3番の意図は「え? 打つからや。三塁打打つからや」と笑った。小野寺は「毎試合毎試合、自分のやることを思い切ってやるだけです」と意欲十分。持ってる男が、少ないチャンスをモノにし、優勝マジックのカウントダウンに貢献した。【古財稜明】