あの時と同じ東京ドームで直球を強く信じた。巨人ドラフト5位ルーキー・船迫大雅投手(26)が延長12回1死一、二塁でマウンドを託された。村上に初球ボールから満塁策をとり申告敬遠。赤羽を空振り三振、続くオスナはスライダーに食らい付くバットを、149キロ直球で遊ゴロに仕留めた。「1点も与えられない場面でしたが相手もプレッシャーを感じてると思って思い切っていきました」。3連投で2試合連続のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。

「あの時に諦めなくてよかった」としみじみ思う。社会人野球・西濃運輸3年目の21年ドラフトで指名漏れ。大学も含めずっと届いていた調査書も消えた。だから11月の都市対抗を最後に辞める覚悟だった。なくなりかけていた野心を取り戻してくれたのは中学からの親友佐藤剛樹さん(27)だった。船迫は8番右翼だった中学野球部で、エースだったのが佐藤さん。「(元ソフトバンク)摂津は27歳でプロ入りした。肘とかぶっ壊れてもいいから150キロ出そうぜ」とがむしゃらな声で言われた。当時、最速148キロだった。

同年の都市対抗1回戦かずさマジック戦、舞台は東京ドーム。人生を懸けて腕を振った。1回、150キロを連発。自己最速を2キロ更新し、3者連続三振を奪った。限界突破した足は5回でつった。チームは負けたけど、試合後スマートフォンを握った。佐藤さんにテレビ電話をかけ、酒を笑い泣きで喉に流し込む親友に向かって「もう1年やるわ」。自然と口にしていた。

1年後のドラフト。オールドルーキーとしてこじ開けたプロの扉。これで3勝目。「究極の場面でしたが抑えられてよかった」。ブルペンに欠かせない存在となった。【上田悠太】

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