巨人阿部慎之助監督(44)が、指で勝負の土俵を宙に描いた。「ホームベースってこれくらいしかないんだよと。とにかくコースに投げられないから『ど真ん中狙って投げてください』って」。

新体制始動2日目となった15日、川崎市ジャイアンツ球場の室内ブルペンで声をかけたのは横川凱投手と畠世周投手だった。「ど真ん中に投げ込む度胸があるかないか。最後はそういうところになると思うので」と元名打者として、そして名捕手として意識改革を促した。

横幅わずか43・2センチのベース板の制空権を制するため、かわすことよりも勝負に挑むことを植え付けていく。コントロールを重視しながら投球を繰り返す後ろ姿に、期待を込めて待ったをかけた。プロ5年目にして初勝利を手にした横川は、今季4勝挙げるも7月以降は未勝利。7年目で1軍登板ゼロの畠は「しっかりついていけたらいいなと。一緒にしがみついていきます」と意気に感じた。2人だけでなく、もう一段階上にいくため、若手投手陣全体に浸透させていく。

始動初日から一夜明けた朝、テレビでメジャーのポストシーズンの映像が流れていた。「最後、アウトローじゃなくて、ど真ん中で三振して終わっていた」。3月のWBC決勝、大谷がトラウトを空振り三振に打ち取る前の2球、ど真ん中への直球を例に挙げながら「あれを理想にしていきたい勝負」と再確認。「技術がなかったらここ(プロの世界)にいないはず。そこ(メンタル)を改革していければ」と、阿部改革が始まった。【栗田成芳】