東北を愛し、東北に愛された巧打者が、ユニホームを脱ぐ。楽天銀次内野手(35)が22日、楽天モバイルパークで会見を開き、現役引退を表明した。

岩手出身で、楽天一筋のプロ18年目。13年には星野仙一監督率いるチームの主軸として、球団初のリーグ優勝と日本一の原動力になった。今後は「アンバサダー」として球団に残り、野球の普及活動を通して引き続き東北を盛り上げていく。

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銀次が生涯楽天を貫き、地元東北で現役生活にピリオドを打った。恩師・星野氏の遺品である流れ星が刺しゅうされた紫色のネクタイを締め、晴れやかな表情で言葉をつむいだ。「みんなが想像できないぐらいに、すごく楽しかったです」。かみしめるように振り返り、涙は見せなかった。

今季終了後、球団から来季構想外を伝えられた。球団スタッフ転身を打診されたが、体はまだまだ動く。そんな中で「東北を離れてほしくない」「ずっと楽天にいてほしい」というファンの声が身に染みた。「やっぱり東北が好きだし、東北は生まれた場所なので、ここで恩返ししていきたい」。選手とは別の形で東北に貢献する決断を下した。

岩手・普代村出身で、捕手として入団。「3年で終わるのかな」というスタート。それでも「悔しい、悔しい」と毎日の練習に励み、星野氏が監督だった12年に主力に定着。翌13年には打率3割1分7厘をマークし、球団初のリーグ優勝、日本一に導いた。

星野氏は最も影響を受けた人物だという。「どんな時でも下を向かず、明るくやれと。その言葉はずっと心の中に残ってます」。プロとしての心構えを学んだ。天国の恩師には「シンプルが好きなんで自分は。『シンプルに引退します』と伝えたいです」と語った。

指導者への夢もあるが、来年1月からは球団職員として「アンバサダー」の肩書で東北6県を巡回。野球教室などを通して地域に寄り添っていく。「正直、心のどこかに火は付いています。でも、将来に向けて自分が選んだ道なので、その道に向かって、ただただ突き進んでいくだけです」。東北を愛する銀次の、恩返しが始まる。【山田愛斗】

◆銀次(ぎんじ)本名は赤見内銀次(あかみない・ぎんじ)。1988年(昭63)2月24日生まれ、岩手・普代村出身。盛岡中央から05年高校生ドラフト3巡目で入団し、09年秋に捕手から内野手へ転向した。13年に日本シリーズ優秀選手賞。14年に三塁手、17年に一塁手でベストナイン。17年に一塁手でゴールデングラブ賞。通算1240試合に出場し、打率2割9分、1239安打、28本塁打、471打点。174センチ、78キロ。右投げ左打ち。

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