新背番号20のウエアを着た西武田村伊知郎投手(29)の遠投が飛んでいく。手足の長い黒田将矢投手(19)が足元のワンバウンドを捕り切れず、そのまま後方へとボールを追った。

1月12日、自主トレ。田村がネット越しに笑う。

「甲斐野、MAJOR HYOGOの後輩なんですよ」

前日11日、ソフトバンクから甲斐野央投手(27)が加入することが急転で決まった。

「2個下の後輩で。そのつながりで(シーズン中も)わざわざあいさつに来てくれてたりしたので。律儀に」

田村が「MAJOR HYOGO」と話すのは、日本語で表記するならば「メジャー兵庫」と呼ばれるチーム。兵庫県の中学3年生からなるKボールのチームだ。

日本中学生野球連盟会長の志太勤氏(89=シダックス取締役最高顧問)らが発案した「Kボール」の大会に出場するチームが全国にあり、そのうちの1つ。軟式野球を終えた中学3年生が、高校での硬式野球に移行するまでの約半年間、軟式と硬式の中間球である「Kボール」で硬式に慣れ、同時に野球の練習を継続することで高い技術も身につけていく。現在は大会ではM号球が使われる。

中学3年生のチームだから、田村は甲斐野と一緒にプレーしたわけではない。それでも気に掛ける後輩が同じチームになる。しかも同じクローザーを狙っていく立場に。とはいえ。

「相手が強力でも自分のできることは変わらないし、100%出し続けた結果、その先はどうなるか分からないので。そういう雑念は捨てて、自分のやるべきことに100%集中するだけなので」

言葉も姿勢もこれまでと変わらない。今季も黙々と投げていく。

「航と甲斐野は同級生ですよね」

田村が少しうれしそうに紹介する。西武松本航投手(27)と甲斐野は「MAJOR HYOGO」のチームメートにあたる。

松本は朝来市出身、甲斐野は西脇市出身。ともに神戸から離れた街で、すくすくと育ってきた。

当時を「背が高くて、大きな…。甲斐野は投げてもいましたけど、バッティングも良くて野手してたりもしました」と懐かしむ。

大学時代も対戦があり、互いにどんどんでっかくなって、まさかのチームメートになった。「昨日、軽く連絡しました」。

松本-甲斐野のリレーだってありえる。松本-甲斐野-田村、または松本-田村-甲斐野のリレーだってありえる。

「そうですね。(リレーで)投げられれば。僕も頑張らないといけないので。頑張りたいと思います」

先発もリリーバーも1軍争いが激化していく。偶然か運命か、その中心に「メジャー兵庫」が居並ぶ。【金子真仁】

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