ヤクルト小川泰弘投手(33)は「投げておいで」と優しく言った。29日、2月1日のキャンプインを前に、一足先に沖縄・浦添で自主トレに励んでいた。練習を終えると、地元の少年が駆け寄ってきた。

それは自然と始まった。捕手のようにしゃがんだ小川は、山なりのボールを受け止め「俺よりいいよ」と笑った。室内練習場前で始まった、即席の投球。うるま市在住で、4月から小学6年生の棚原瑠生(るい)君は、頭をなでられ「やっば」と家族の元に駆け寄った。

忘れられない1日。小川は「ちゃんと構えたとこに来て、上手だなと思いました」。瑠生君は「うれしかった」と恥ずかしそうだった。投手として平敷屋ホープでプレー。小学2年の時、春季キャンプで小川と写真撮影してもらった時からライアンにぞっこんだ。

この物語には、まだ続きがあるかもしれない。全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」で沖縄代表となれば、全国大会に進める。舞台はヤクルトの本拠地・神宮。今度は沖縄以外の土地で、小川と再会出来るかもしれない。小川も「会いたいですね」と再会を心待ちにした。

幼少期の1日が、ライアンによみがえる。地元・愛知の野球教室で、中日で活躍した朝倉健太氏に会った。同氏と出席した中日のコーチから「『この子のこの部分はお前(朝倉)よりうまいぞ』って。その部分は体の使い方なのか忘れましたけど」。褒められたことは今でも忘れない。「1回の触れ合いで思い出になるんで」。最高気温20度。沖縄は暑い。それ以上に、温かい現場に出くわした。【栗田尚樹】

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