チームのための1勝を-。阪神青柳晃洋投手(30)が日刊スポーツの開幕直前インタビューで、2度目の大役に懸ける覚悟を語った。8勝にとどまった昨季を「ふがいない」と振り返るが、それでも岡田彰布監督(66)から開幕投手に指名され、29日の巨人戦(東京ドーム)へ燃えている。昨年の日本シリーズのような一戦必勝の精神で、G倒からリーグ連覇へのダッシュを決める。【取材・構成=中野椋】

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青柳はオフから一貫して「開幕投手を目指す」と言い続けてきた。昨季は3年ぶりに2桁勝利に届かず8勝。「ふがいない」と表現する1年だった。それでも、目指すべき場所はブレなかった。そこには信念がある。

「開幕ローテーション入りを目標にする人もいるかもしれないですけど、僕は開幕投手を目指さなくなったら、もう先発じゃなくていいかな、という気持ちになっています。僕は先発として、まず目指すべきは、そこ(開幕投手)だと思う。その気持ちは先発でやる以上、変わらないですね」

22年は開幕投手に指名されながら、新型コロナウイルスに罹患(りかん)し、藤浪にその座を譲った。昨季はDeNAを相手に5回2/3を1失点に抑え、開幕星を挙げた。1年前と今では、心境に少し違いがある。

「去年の開幕投手は、その前年(22年)の成績が良かったからやって当たり前だったのかもしれないですけど、去年がふがいない成績で終わってしまったところから今年も選んでもらえたというのは、すごく意気に感じています。正直に言うと、選ばれないだろうなという気持ちもありましたから。やってやろうと常に思っていますけど、さらに思うようになりましたね」

143試合分の1。その受け止め方は、人それぞれ。青柳でいえば先発の柱としての思いが、言葉に色濃く出る。

「先発はシーズンで投げ続けて、25試合くらいの登板になると思う。25分の1といえば25分の1ですけど、それは僕にとって25分の1なだけであって、チームにとっては大事な一戦。監督も個人の成績を上げれば連覇につながると言っているので、例えば他の24試合は自分の成績が良ければチームも勝つだろう、と思ってもいいと思います。でも、最初の1試合だけはチームのための試合。チームが勝てばいい、そんなピッチングができたらいいと思います」

フォア・ザ・チームに徹する姿がよみがえる。昨年の日本シリーズ第7戦。先発青柳は4回2/3で降板したものの無失点投球で、日本一を演出した。勝利投手は3番手伊藤将となり「悔しいのは悔しい」と振り返るが「ベストはチームが勝つことだった」と明確だった。「3・29」は、そんな“日本シリーズモード”で臨むことになりそうだ。

「4回2/3無失点でもチームが勝ったなら、僕は納得して降板する1試合になると思います。『9回を1人でいく』ことが理想かもしれないですけど、5回でも6回でも、ピンチで後ろが切り抜けてくれるのであれば代わればいいですし、僕が抑える確率が高ければ、自分が投げればいい。味方が点を取ってくれるまで、みんなで守り続けることが大事だと思います」

日本シリーズ最終戦に先発し、その翌年開幕投手を務めた阪神の選手は青柳で3人目となる。この“連投”を務め上げたのは62年→63年の小山正明、14年→15年のメッセンジャーで、いずれもチームは開幕戦に勝利している。

「続けたら光栄ですね。勝たなきゃ意味がない。1戦目の勝ちには、大きな価値があると思うので」

球団史上初のリーグ連覇へ、一戦必勝を期す男が、巨人打線の前に立ちはだかる。

 

▼阪神の投手で、日本シリーズ最終戦と翌年の公式戦開幕戦に続けて先発した投手は過去2人いる。小山正明は62年公式戦で、村山実との両輪でセ2位の27勝をマーク。東映(現日本ハム)との日本シリーズ第7戦も延長10回1失点の力投を見せたが、救援の村山が東映の西園寺に決勝アーチを浴びた。翌年63年開幕戦の巨人戦では勝利投手となり、留飲を下げた。また阪神が初めてCSを突破して進んだ14年の日本シリーズでは、ソフトバンクと対戦。第5戦でメッセンジャーは8回途中1失点と粘ったものの、打線が攝津の前に沈黙した。翌年15年開幕戦では6回3失点で勝は無関係。延長10回に、マートンがサヨナラ打し、白星発進した。