阪神が8月に100周年を迎える甲子園の今季開幕戦を1-0快勝で飾り、勝率を5割に戻した。0-0の5回に、近本光司外野手(29)が広島床田から均衡を破る先制決勝のタイムリー。初回には先頭野間の長打性の当たりをスライディングで好捕するなど、淡路島出身の後輩で昨季のMVP右腕、村上頌樹投手(25)の初勝利を攻守でアシストした。昨季の日本一軍団が満員札止めのホームで“快幕”、一気の逆襲に転じる。

   ◇   ◇   ◇

やっぱり甲子園は最高だ。4万2601人の大歓声が心地いい。近本は村上と並んだヒーローインタビューで、いきなり裏話を明かした。

「試合前にロッカーで『そろそろ2人でお立ち台に立とうか』と話していたんで。よかったですね」

有言実行。今季初勝利の後輩の隣で、先制&決勝打の先輩がほほえんだ。虎の「淡路島コンビ」でつかんだ24年の甲子園開幕星だ。

アグレッシブだった。0-0の5回1死二塁。9番村上が犠打を決め「ここは打たないとな、と思っていました」と集中した。床田の初球を捉え右翼へ適時打。「自分のスイングができるかどうかだった」と己を貫き、3試合連続安打で虎の子の1点をもぎ取った。

甲子園は8月1日に開場100周年を迎える。メモリアルイヤーの初戦。その初回、守備で流れを引き寄せたのも、近本だった。

1番野間の左中間への飛球に全力チャージ。スライディングキャッチして転がりながらも白球を離さない。雨の影響で「芝生ね、柔らかかったので」と右膝を打ち付けるも問題なしだ。

「エラーするのも怖いけど、ビビって前に出れないのが一番怖いことなので」

昨季守備率10割で3年連続ゴールデングラブ賞を獲得した名手は、5日のヤクルト戦で失策をおかしたが、それを取り返す美技で波に乗った。社(兵庫)で甲子園出場がかなわず「憧れの場所」と表現するホームグラウンドで走り回った。

甲子園のファンはいつでも力をくれる。ただ、近本は意外なところで“楽しみ”も見つけているという。「守っている時は、『あの人、今日もおるな』とか、目立つ人を見つけたりする時もあるなあ。話しかけてくる人もおるし」。視野の広さは、心に余裕がある証しだろう。この夜も「守備の時寒かったので、お客さんも寒かったんやろな」と思いつつ、熱い一打で沸かせてみせた。

チームは6連戦の頭を取り、10試合終えて5勝5敗の勝率5割に戻した。「今日はちょっと早く終わったので、みなさんこの後も楽しんでください!」。試合終了は午後8時31分。今年初の「六甲おろし」が響いた痛快な甲子園ナイト。今夜も連勝で、初の貯金生活といきたい。【中野椋】

▼阪神が甲子園のシーズン初戦で1-0勝利を飾るのは1959年(昭34)、1964年(昭39)に続き60年ぶり3度目。対戦相手はいずれも、今回と同じ広島。59年4月11日は浅越桂一のソロ本塁打を小山正明が、64年は吉田義男のソロ本塁打を村山実が、いずれも完封で守り抜いた。

【関連記事】阪神ニュース一覧